Monday, December 30, 2019

Soseki Natsume: Ten Nights of Dreams: The Fifth Night (Ruby)



夢十夜ゆめじゅうや



夏目なつめ漱石そうせき



第五夜だいごや



こんなゆめた。



***



なんでもよほどふることで、

神代かみよちかむかしおもわれるが、

自分じぶんいくさをして運悪うんわる敗北まけたために、

生擒いけどりになって、

てき大将たいしょうまええられた。



***



そのころひとはみんなたかかった。



そうして、みんなながひげやしていた。



かわおびめて、

それへぼうのようなつるぎるしていた。



ゆみ

藤蔓ふじづるふといのをそのままもちいたようにえた。



うるしってなければみがきもかけてない。



きわめて素樸そぼくなものであった。



***



てき大将たいしょうは、

ゆみ真中まんなかみぎにぎって、

そのゆみくさうえいて、

酒甕さかがめせたようなもののうえ

こしをかけていた。



そのかおると、はなうえで、

左右さゆうまゆふと接続つながっている。



そのころ髪剃かみそりうものは無論むろんなかった。



***



自分じぶんとりこだから、

こしをかけるわけかない。



くさうえ胡坐あぐらをかいていた。



あしにはおおきな藁沓わらぐつ穿いていた。



この時代じだい藁沓わらぐつふかいものであった。



つと膝頭ひざがしらまでた。



そのはしところわらすこ編残あみのこして、

ふさのようにげて、

あるくとばらばらうごくようにして、かざりとしていた。



***



大将たいしょう

篝火かがりび自分じぶんかおて、

ぬかきるかといた。



これはそのころ習慣しゅうかんで、

捕虜とりこにはだれでも一応いちおうはこういたものである。



きるとこたえると降参こうさんした意味いみで、

ぬとうと屈服くっぷくしないとことになる。



自分じぶん一言ひとことぬとこたえた。



大将たいしょうくさうえいていたゆみ

むこうへげて、

こしるしたぼうのようなけん

するりときかけた。



それへかぜなびいた篝火かがりび

よこからきつけた。



自分じぶんみぎかえでのようにひらいて、

たなごころ大将たいしょうほうけて、

うえげた。



てと相図あいずである。



大将たいしょう

ふとつるぎをかちゃりとさやおさめた。



***



そのころでもこいはあった。



自分じぶんまえ

一目ひとめおもおんないたいとった。



大将たいしょう

けてとりくまでなら

った。



とりくまでにおんなをここへばなければならない。



とりいてもおんななければ、

自分じぶんわずにころされてしまう。



***



大将たいしょうこしをかけたまま、

篝火かがりびながめている。



自分じぶん

おおきな藁沓わらぐつわしたまま、

くさうえおんなっている。



よるはだんだんける。



***



時々ときどき篝火かがりびくずれるおとがする。



くずれるたびに狼狽うろたえたようにほのお

大将たいしょうになだれかかる。



真黒まっくろまゆしたで、

大将たいしょうがぴかぴかとひかっている。



するとだれやらて、

あたらしいえだをたくさんなか

んでく。



しばらくすると、がぱちぱちとる。



暗闇くらやみはじかえすような

いさましいおとであった。



***



このときおんなは、

うらならつないである、

しろうました。



たてがみ三度さんどでて

たかにひらりとった。



くらもないあぶみもない裸馬はだかうまであった。



ながしろあしで、

太腹ふとばらると、

うまはいっさんにした。



だれかがかがりをしたので、

とおくのそら薄明うすあかるくえる。



うまはこのあかるいものを目懸めがけて

やみなかんでる。



はなからはしらのようないき

二本にほんしてんでる。



それでもおんなほそあしでしきりなしに

うまはらっている。



うまひづめおとちゅうるほど

はやんでる。



おんなかみ吹流ふきながしのように

やみなかいた。



それでもまだかがりのあるところまでられない。



***



すると真闇まっくらみちはたで、

たちまちこけこっこうというとりこえがした。



おんな空様そらざまに、

両手りょうてにぎった手綱たづなをうんとひかえた。



うま前足まえあしひづめ

かたいわうえ

発矢はっしきざんだ。



***



こけこっこうとにわとりがまた一声ひとこえいた。



***



おんなはあっとって、

めた手綱たずな一度いちどゆるめた。



うま諸膝もろひざる。



ったひととも真向まともまえへのめった。



いわしたふかふちであった。



***



ひずめあと

いまだにいわうえのこっている。



にわとり真似まねをしたものは

天探女あまのじゃくである。



このひずめあといわきざみつけられているあいだ

天探女あまのじゃく自分じぶんかたきである。





Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.


No comments:

Post a Comment