Monday, March 30, 2020

Japanese Ghost Stories 破られた約束 Of a Promise Broken



やぶられた 約束やくそく

Of a Promise Broken

Lafcadio Hearn (Koizumi Yakumo)


〔一〕

わたし は

 ぬ の は こわく あり ません』

"I AM not afraid to die."


に かけて いる つま が

い ました。

said the dying wife;


『ただ ひと

  に なる こと が あり ます。

"there is only one thing that troubles me now.


 わたし の かわり に

 この うち へ だれ が る の か


 それ が り たい の です』

I wish that I could know who will take my place in this house."


かなしんで いる おっと は

こたえ ました。


だれ も

 おまえ の かわり は  ない。

"My dear one," answered the sorrowing husband, "nobody shall ever take your place in my home.


 もう けっして、けっして 再婚さいこん は し ない』

I will never, never marry again."


その とき


かれ は

こころ から そう おもって


はなして い ました。

At the time that he said this he was speaking out of his heart;


いま うしない かけて いる おんな を

あいして いた から です。

for he loved the woman whom he was about to lose.


武士ぶし の ちかい に かけて?』

"On the faith of a samurai?"


かすかに ほほみ ながら


彼女かのじょ は

たずね ました。

she questioned, with a feeble smile.


武士ぶし の ちかい に かけて』

"On the faith of a samurai,"


かれ は


彼女かのじょ の 青白あおじろい やせた かお を

で ながら


こたえ ました。

he responded, stroking the pale thin face.


『それなら、あなた ……』


彼女かのじょ は

い ました。

"Then, my dear one," she said,


わたし を

 にわ に めて ください ね?

"you will let me be buried in the garden, will you not?


 あの むこう の すみ の

 私逹わたしたち が えた あの うめ の  の

 ちかく に。

near those plum-trees that we planted at the further end?

うめ:plum-trees

 ずっとまえ から

 この こと を たのみ たかった の です。

I wanted long ago to ask this;


 でも

 もし あなた が 再婚さいこん する の なら


 そんな ちかい ところ に はか が ある の は

 いや だろう


 と おもった の です。

but 1 thought, that if you were to marry again, you would not like to have my grave so near you.


 もう

 再婚さいこん し ない と


 あなた が 約束やくそく して くれた から

Now you have promised that no other woman shall take my place;


 わたし は


 遠慮えんりょし ないで

 おねがい を し ます。

so I need not hesitate to speak of my wish. ...


 わたし を にわ に めて しい。

I want so much to be buried in the garden.


 そう すれ ば

 時々ときどき あなた の こえ が ける でしょう。

I think that in the garden I should sometimes hear your voice,


 それに


 はる に なったら

 はな が られる でしょう』

and that I should still be able to see the flowers in the spring."


『おまえ が のぞむ ように しよう』

"It shall be as you wish,"


かれ は こたえ ました。

he answered.


『しかし

 いま は


 そんな んで から の はなし は

 めよう、

"But do not now speak of burial:


 もう 希望きぼう が ない という ほど

 ひどい わけ じゃ ない の だから』

you are not so ill that we have lost all hope."


駄目だめ なの』

"I have,"


彼女かのじょ は

こたえ ました。

she returned;


今朝けさ の うち に

 に ます。

"I shall die this morning. . . .


 でも

 にわ に めて くれ ます ね』

But you will bury me in the garden? "


『わかった』

"Yes,"


かれ は い ました。

he said, --"


私達わたしたち が えた

 うめ の  の かげ に ……

under the shade of the plum-trees that we planted;


 そして

 そこ に 立派りっぱな はか を つくろう』

--and you shall have a beautiful tomb there."


『それから

 ちいさな すず を ひと


 ください』

"And will you give me a little bell?"


すず?』

"Bell --?"


『はい、


 ひつぎ の なか へ


 ちいさな すず を

 れて ください。

"Yes: I want you to put a little bell in the coffin,

ひつぎ:coffin

 お遍路へんろさま の って いる ような

 ちいさな すず ……

--such a little bell as the Buddhist pilgrims carry.

■お遍路へんろ:Buddhist pilgrims

 そんな すず を ください』

Shall I have it? "


ちいさな すず を あげよう。

"You shall have the little bell,


 なにか ほか

 しい もの は?』

--and anything else that you wish,"


ほかには なにも あり ません』

"I do not wish for anything else,"


彼女かのじょ は い ました。

she said.


『あなた ……

. . "My dear one,


 あなた は

 いつも わたしに とても やさしく して くれ ました。

you have been very good to me always.


 もう

 しあわせ に ね ます』

Now I can die happy."


それから


つま は  を じて

に ました。

Then she closed her eyes and died--


それ は

まるで


つかれた 子供こども が ねむる ように

やすらか でした。

as easily as a tired child falls asleep.


んだ 彼女かのじょ は

うつくしく

She looked beautiful when she was dead;


かお には

ほほみ が かんで い ました。

and there was a smile upon her face.


***


彼女かのじょ は


にわ の、

きだった  の かげ に


められ ました。

She was buried in the garden, under the shade of the trees that she loved;


ちいさな すず も 一緒いっしょ に

められ ました。

and a small bell was buried with her.


はか の うえ には


家紋かもん と 戒名かいみょう の られた

立派りっぱな 石碑せきひ が


てられ ました。

Above the grave was erected a handsome monument, decorated with the family crest, and bearing the kaimyo:

家紋かもん:family crest ■戒名かいみょう:a posthumous Buddhist name

戒名かいみょう は

慈海じかいいん梅花ばいか明影みょうえい大姉だいし』 と られて い ました。

--"Great Elder Sister, Luminous-Shadow-of-the-Plum-Flower-Chamber, dwelling in the Mansion of the Great Sea of Compassions"


しかし


つま が んで

一年いちねん も たた ない うち に

But, within a twelve-month after the death of his wife,


さむらい の 親戚しんせき や 友人ゆうじん は、


かれ に

再婚さいこん を すすめ はじめ ました。

the relatives and friends of the samurai began to insist that he should marry again.


『おまえ は まだ わかい』

"You are still a young man,"


彼等かれら は い ました。

they said,


『それに 一人ひとり 息子むすこ だ、

"and an only son;


 子供こども も い ない。

and you have no children.


 さむらい には

 結婚けっこん する 義務ぎむ が ある。

It is the duty of a samurai to marry.


 子供こども が い ない まま んで しまったら


 だれ が


 先祖せんぞ を まつったり、

 そなもの を あげたり する のだ?』

If you die childless, who will there be to make the offerings and to remember the ancestors? "

そなもの:offerings


***


そんな こと を たくさん われ


かれ は とうとう

再婚さいこん を 説得せっとく された の です。

By many such representations he was at last persuaded to marry again.


花嫁はなよめ は

わずか 十八じゅうはち でした。

The bride was only seventeen years old;


そして


にわ の はか の

無言むごん の 非難ひなん にも かかわらず、


彼女かのじょ を

こころ から あいする ように なって き ました。

and he found that he could love her dearly, notwithstanding the dumb reproach of the tomb in the garden.


***


〔二〕

再婚さいこん して 七日目なのかめ まで は、


わかい つま の 幸福こうふく を

さまたげる ような こと は


なにも き ません でした。

Nothing took place to disturb the happiness of the young wife until the seventh day after the wedding,


七日目なのかめ に

おっと は


よる

しろ に い なけれならない 仕事しごと を


めいじられ ました。

--when her husband was ordered to undertake certain duties requiring his presence at the castle by night.


それ は


つま を

いえ に 一人ひとり のこして か なければならない


はじめて の よる でした。

On the first evening that he was obliged to leave her alone,


つま は


なにか 説明せつめい でき ない 不安ふあん を

かんじ ました。

she felt uneasy in a way that she could not explain,


理由りゆう は わからない の です が、

ばくぜんと こわかった の です。

--vaguely afraid without knowing why.


とこ に ついても

ねむれ ません でした。

When she went to bed she could not sleep.


なんとなく


あたり の 空気くうき が

みょうに 重苦おもくるしかった の です。

There was a strange oppression in the air,


それ は

あらし の まえ に 時々ときどき おとずれる ような


言葉ことば に でき ない

重苦おもくるしさ でした。

--an indefinable heaviness like that which sometimes precedes the coming of a storm.


***


うしこく に、

彼女かのじょ は


そと の 暗闇くらやみ の なか で

すず が る の を


き ました。

About the Hour of the Ox she heard, outside in the night, the clanging of a bell,


うしこく:2 a.m.

それ は

遍路へんろ の すず でした。

--a Buddhist pilgrim's bell;


どんな お遍路へんろ が


こんな 時間じかん に

さむらい の 屋敷やしき の あたり を

とおる の だろう か


と 彼女かのじょ は 不思議ふしぎに おもい ました。

--and she wondered what pilgrim could be passing through the samurai quarter at such a time.


屋敷やしき:mansion

やがて、

しばらく しずか に なり


それから

すず は もっと ちかくで ひびき ました。

Presently, after a pause, the bell sounded much nearer.


あきらかに


遍路へんろ は

その いえ に ちかづいてる の です。

Evidently the pilgrim was approaching the house;


しかし


どうして

みち の ない、いえ の うら から

ちかづいてる の でしょうか?

--but why approaching from the rear, where no road was?


突然とつぜん


いぬ が

奇妙きみょうに そして なにか を おそれる ように


あわれな ごえ を あげ、

そして、はじめた の です。

. . . Suddenly the dogs began to whine and howl in an unusual and horrible way;


そして


悪夢あくむ の ような 恐怖きょうふ が

彼女かのじょ に おそいかかり ました。

--and a fear came upon her like the fear of dreams.


すず は


たしかに

にわ の なか で って いた の です。

. . . That ringing was certainly in the garden.


彼女かのじょ は

がって


女中じゅちゅう を こし に

こう と し ました。

. . . She tried to get up to waken a servant.

しかし


きる こと が

でき ない の でした。


うごく こと も

こえ を あげる こと も


でき ない の です。

But she found that she could not rise, --could not move, --could not call.


すず の おと は

ちかづいて  ます。


そして


さらに

ちかづいて  ました。

. . . And nearer, and still more near, came the clang of the bell;


ああ


いぬ の

なんう かた ……

--and oh! how the dogs howled!


そして

かげ が しのむ ように


一人ひとり の おんな が

部屋へや へ すっと はいってた の です。

. . . Then, lightly as a shadow steals, there glided into the room a Woman,


 は すべ

しっかり められて い ました。

--though every door stood fast,


どの ふすま も

うごき ません でした。

and every screen unmoved,

■ふすま:sliding screen

しかし


きょうかたびら を 

遍路へんろ の すず を った おんな が


はいってた の です。

--a Woman robed in a grave-robe, and carrying a pilgrim's bell.

きょうかたびら:grave-robe

んで から かなり たって いる のか


はいってた おんな には

 が あり ません でした。

Eyeless she came, --because she had long been dead;


ほどけた かみ が


かお の まわり に

がって い ました。

--and her loosened hair streamed down about her face;


おんな は


みだれた かみ の あいだ から

くなった  で つめ、


くなった した で しゃべり ました。

--and she looked without eyes through the tangle of it, and spoke without a tongue:


***


『この いえ に いて は ならない。

--" Not in this house,


 おまえ は

 このいえ に いて は ならない。

--not in this house shall you stay!


 ここでは まだ

 わたし が おんな主人しゅじん だ。

Here I am mistress still.

おんな主人しゅじん:mistress

 おまえ は け。

You shall go;


 そして


 く 理由りゆう を

 だれにも って は ならない。

and you shall tell to none the reason of your going.


 もし

 あのひと に ったら、


 おまえ を き に する』

If you tell HIM I will tear you into pieces! "


***


そう い ながら


幽霊ゆうれい は

姿すがた を し ました。

So speaking, the haunter vanished.

幽霊ゆうれい:haunter

花嫁はなよめ は


恐怖きょうふ の あまり

 を うしなって しまい ました。

The bride became senseless with fear.


あけがた まで


彼女かのじょ は

うしなった まま でした。

Until the dawn she so remained.


***


それでも、

あかるい ひかり を る と


彼女かのじょ は


自分じぶん が たり いたり した もの が

現実げんじつ だった のか


うたがい ました。

Nevertheless, in the cheery light of day, she doubted the reality of what she had seen and heard.


だれにも って は ならない

と 警告けいこく された 記憶きおく が


彼女かのじょ に おもく のしかかり

The memory of the warning still weighed upon her so heavily that


彼女かのじょ は

おっと にも だれ にも、


その 幽靈ゆうれい の こと を

はなそう と し ません でした。

she did not dare to speak of the vision, either to her husband or to any one else;


彼女かのじょ は


ただ おそろしい ゆめ を 

病気びょうき に なった だけ だ


と 自分じぶん を ほとんど 納得なっとく させる こと が

できた の です。

but she was almost able to persuade herself that she had only dreamed an ugly dream, which had made her ill.


***


しかし

つぎ の  の ばん には


もはや

うたがう こと は でき ません でした。

On the following night, however, she could not doubt.


また うしこく に


いぬ が また

え、あわれな ごえ を あげ はじめ ました。

Again, at the Hour of the Ox, the dogs began to howl and whine;


また

すず が り ました。

--again the bell resounded,


それ は

にわ から ゆっくり と ちかづいて  ました。

--approaching slowly from the garden;


また

それ を いて いた 彼女かのじょ は


がって、

こえ を そう と し ました が


駄目だめ でした。

--again the listener vainly strove to rise and call;


また

んだ おんな が

部屋へや に はいって


小声こごえで さけび ました。

--again the dead came into the room, and hissed,


『おまえ は け。

--" You shall go;


 その 理由りゆう を

 だれ にも って は ならない。

and you shall tell to no one why you must go!


 もし

 あのひと に こっそり ったら


 おまえ を き に する。』


If you even whisper it to HIM, I will tear you in pieces! " . . .


今度こんど


幽靈ゆうれい は

寝床ねどこ の ちかく まで  ました。

This time the haunter came close to the couch,


そして


かがみこみ、つぶやき、

かお を しかめ ました。

--and bent and muttered and mowed above it. .


***


翌朝よくあさ

さむらい が しろ から かえる と

Next morning, when the samurai returned from the castle,


かれ の わかい つま は


かれ の まえ に ひれして

ねがい を し ました。

his young wife prostrated herself before him in supplication:


『おねがい です』

--" 1 beseech you,"


彼女かのじょ は い ました。

she said,


『こんな こと を う の は

 恩知おんしらず で 失礼しつれい なの です が


 ゆるして ください。

"to pardon my ingratitude and my great rudeness in thus addressing you:


 実家じっか へ かえり たい の です。

but I want to go home;


 いま すぐ かえり たい の です』

--I want to go away at once."


『ここ に なに

 いやな こと でも ある の か?』

"Are you not happy here?"


かれ は

本当ほんとうに おどろいて たずね ました。

he asked, in sincere surprise.


わたし が 留守るす の あいだ に


 だれか なに

 意地悪いじわるな こと でも した の か?』

"Has any one dared to be unkind to you during my absence?"


『そんな こと では あり ません』

"It is not that --"


彼女かのじょ は


き ながら

こたえ ました。

she answered, sobbing.


『ここでは だれも が

 わたし に 大変たいへん 親切しんせつ に して くれ ます。

"Everybody here has been only too good to me.


 けれども、

 わたし は


 このまま あなた の つま で いる こと は

 でき ません。

. . . But I cannot continue to be your wife;


 わたし は

 か なければなりません。』

--I must go away. . . ."


かれ は


非常ひじょうに おどろいて

さけび ました。


『この いえ で なにか いやな こと が

 あった という のは


 とても つらい こと だ。

"My dear," he exclaimed, in great astonishment, "it is very painful to know that you have had any cause for unhappiness in this house.


 わたし には


 おまえ が き たい という 理由りゆう が

 わからない。

But I cannot even imagine why you should want to go away


 だれ

 おまえ に ひどい こと を して い ない のに


 く という のは ……。

--unless somebody has been very unkind to you


 まさか

 わかれて くれ

 と う つもり では ない だろう?』

--Surely you do not mean that you wish for a divorce?"


彼女かのじょ は


ふるえ き ながら

こたえ ました。

She responded, trembling and weeping,


わかれて もらえ なければ、


 わたし は

 ぬ こと に なる でしょう。』

--"If you do not give me a divorce, I shall die! "


かれ は

しばらく だまって い ました。

He remained for a little while silent,


どうして


つま が

こんな おどろくような こと を

した のか


理由りゆう を かんがえよう と し ました が

わかり ません。

--vainly trying to think of some cause for this amazing declaration.


それから


感情かんじょう を かお に さ ない で

こたえ ました。

Then, without betraying any emotion, he made answer:


なんの  も ない おまえ を

 親元おやもと に おくかえす の は

--" To send you back now to your people, without any fault on your part,


 ずかしい こと だ と おもう。

would seem a shameful act.


 おまえ の ねがい に 見合みあ

 それなりの 理由りゆう を って くれた なら、……

If you will tell me a good reason for your wish,


 それ が どんな 理由りゆう でも、……

--any reason


 わたし が

 堂々どうどうと 説明せつめい できる ような こと を


 って くれた なら

that will enable me to explain matters honorably,


 わたし は

 離縁状りえんじょう を く こと が できる。

--I can write you a divorce.

離縁りえん:divorce

 しかし、


 理由りゆう …… それなりの 理由りゆう が なけれ ば、

 わかれる こと は でき ない。

But unless you give me a reason, a good reason, I will not divorce you,


 私達わたしたち の いえ の 名誉めいよ を

 けがす ような こと が


 あって は ならない から』

--for the honor of our house must be kept above reproach."


***


彼女かのじょ は

はなさ なければならなく なって しまい ました。

And then she felt obliged to speak;


そこで

彼女かのじょ は すべて を はなし ました。

and she told him everything,


そして


恐怖きょうふ に くるしみ ながら

さらに くわえ ました。

--adding, in an agony of terror,


『もう

 あなた に はなし ました から、


 わたし は ころされ ます。

--Now that I have let you know, she will kill me!


 わたし を ころし ます。』

--she will kill me! . . ."


さむらい は

勇気ゆうき が あり


もの など

しんじる ような おとこ では なかった の ですが

Although a brave man, and little inclined to believe in phantoms,


一瞬いっしゅん とても おどろき ました。

the samurai was more than startled for the moment.


しかし


簡単かんたんで 自然しぜんな 説明せつめい が

すぐに おもかび ました。

But a simple and natural explanation of the matter soon presented itself to his mind.


かれ は い ました。


『おまえ は いま

 とても 神経質しんけいしつ に なって いる。

"My dear," he said, "you are now very nervous;


 だれ

 つまらない はなし を した もの が

 いる の だろう。

and I fear that some one has been telling you foolish stories.


 ただ この いえ で、

 へんな ゆめ を た という だけ で、


 わかれる こと は でき ない。

I cannot give you a divorce merely because you have had a bad dream in this house.


 しかし


 わたし が 留守るす の あいだ

 その ように くるしんで いる のは、


 本当ほんとうに かわいそう だ。

But I am very sorry indeed that you should have been suffering in such a way during my absence.


 今夜こんや も

 わたし は しろ へ か なければならない。

To-night, also, I must be at the castle;


 しかし

 おまえ を 一人ひとり には し ない。

but you shall not be alone.


 家来けらい 二人ふたり に


 おまえ の 部屋へや で

  ない で

 見張みはり を する ように


 命令めいれい しよう。

I will order two of the retainers to keep watch in your room;


 そうすれば

 安心あんしん して ねむれる だろう。

and you will be able to sleep in peace.


 二人ふたり とも よい おとこ だ。

They are good men;


 できるだけ

 けて くれる』

and they will take all possible care of you."


おっと が


ふかい おもいやり と 愛情あいじょう を こめて

はなして くれた ので

Then he spoke to her so considerately and so affectionately


彼女かのじょ は


自分じぶん の 恐怖きょうふ が

ほとんど ずかしく なり ました。

that she became almost ashamed of her terrors,


そして

この いえ に いよう と 決心けっしんし ました。

and resolved to remain m the house.


***


〔三〕


わかい つま に つけられた 二人ふたり の 家来けらい は

The two retainers left in charge of the young wife were


おおきな からだ で

勇気ゆうき が あり

純心じゅんしんな おとこたち でした。

big, brave, simple-hearted men,


おんな や 子供こども の 警護けいご を

した 経験けいけん も あり ました。

--experienced guardians of women and children.


花嫁はなよめ を

元気げんきづける ため に


彼女かのじょ に

面白おもしろい はなし を し ました。

They told the bride pleasant stories to keep her cheerful.


彼女かのじょ は


二人ふたり と

ながあいだ はなし を し ました。

She talked with them a long time,


かれら の 冗談じょうだん に わら

laughed at their good-humored fun,


ほとんど

恐怖きょうふ を わすれて しまい ました。

and almost forgot her fears.


彼女かのじょ が

る ために よこ に なる と

When at last she lay down to sleep,


二人ふたり の さむらい は


屏風びょうぶ の うしろ の

部屋へや の すみ に すわって

the men-at-arms took their places in a corner of the room, behind a screen,

屏風びょうぶ:screen

 を はじめ ました。

and began a game of go,(1)

(1) A game resembling draughts, but much more complicated.


そして

彼女かのじょ を こさ ない ように


小声こごえ で はなして い ました。

--speaking only in whispers, that she might not be disturbed.


彼女かのじょ は

幼児ようじ の ように ねむり ました。

She slept like an infant.


***


しかし

また


うしこく に


彼女かのじょ は 恐怖きょうふ で うめき ながら

 を さまし ました。

But again at the Hour of the Ox she awoke with a moan of terror,


あの すず が

こえた の です。

--for she heard the bell!


それ は もう

ちかく まで て い ました。

... It was already near,


そして

さらに ちかづいて  ました。

and was coming nearer.


彼女かのじょ は

き ました。

She started up;


彼女かのじょ は

さけび ました。

she screamed;


しかし


その 部屋へや に

もの が うごく 気配けはい は


なにも あり ません でした。

--but in the room there was no stir,


ただ

 の ような しずけさ が ……

--only a silence as of death,


して いく しずけさ ……

--a silence growing,


く なって いく しずけさ ……


--a silence thickening.


彼女かのじょ は


さむらい の ところ へ

はしってき ました。

She rushed to the men-at-arms:


二人ふたり は

碁盤ごばん の まえ に すわった まま


すこし も うごか ない で

たがい に 相手あいだ を じっと て い ました。

they sat before their checker-table, --motionless, --each staring at the other with fixed eyes.


彼女かのじょ は

二人ふたり に さけび ました。

She shrieked to them:


二人ふたり を ゆりうごかし ました。

she shook them:


しかし

かれら は


こおりついた ように

じっと して い ました。

they remained as if frozen. . . .


***


あとで

かれら は つぎ の ように い ました。

Afterwards they said that


すず が こえた ……

they had heard the bell,


花嫁はなよめ の さけび も こえた ……

--heard also the cry of the bride,


こそう と して

ゆりうごかした のも わかって いた ……

--even felt her try to shake them into wakefulness;


しかし


うごく こと も、しゃべる こと も

でき なかった。……

--and that, nevertheless, they had not been able to move or speak.


その 瞬間しゅんかん から

From the same moment


かれら は

く こと も る こと も

でき なく なった の です。

they had ceased to hear or to see:


くろな ねむり が

かれら を とらえて しまった の です。

a black sleep had seized upon them.


***


 が けて


かえって た おっと が

花嫁はなよめ の 部屋へや に はいる と

Entering his bridal-chamber at dawn,


だまり の なか に

わかい つま の よこたわって いる の が


えかかった あかり で

え ました。


それ は

くび の ない 死体したい でした。

the samurai beheld, by the light of a dying lamp, the headless body of his young wife, lying in a pool of blood.

だまり:a pool of blood

二人ふたり の 家来けらい は


ちかけ の  を まえ に して

すわった まま


ねむって い ました。

Still squatting before their unfinished game, the two retainers slept.


主人しゅじん の さけび を いて

At their master's cry


かれら は き ました。

they sprang up,


そして


ゆか の うえ の

おそろしい 出来事できごと を


茫然ぼうぜん と て い ました。

and stupidly stared at the horror on the floor. . . .


***


くび は

どこにも 見当みあたり ません。

The head was nowhere to be seen;


その すさまじい きず は、


くび が られた の では なく

ちぎりられた こと を

あらわして い ました。

--and the hideous wound showed that it had not been cut off, but torn off.


 の あと は


部屋へや から 縁側えんがわ の かど まで

つづいて い ました。

A trail of blood led from the chamber to an angle of the outer gallery,


雨戸あまど は

引裂ひきさかれて い ました。

where the storm-doors appeared to have been riven apart.


三人さんにん は

 の あと を たどって


にわ に  ました。

The three men followed that trail into the garden,


草地くさち を とおぎ ……

砂場すなば を とおぎ ……

--over reaches of grass, --over spaces of sand,


あやめ で かこまれた いけ に 沿って すす

--along the bank of an iris-bordered pond,


すぎ と たけ の くらい かげ を すすみ ました。

--under heavy shadowings of cedar and bamboo.

■あやめ:iris

かど を がる と

突然とつぜん


こうもり の ように 

魔物まもの が


まえ に あらわれ ました。

And suddenly, at a turn, they found themselves face to face with a nightmare-thing that chippered like a bat:


それ は

ながあいだ められて いた

おんな の 姿すがた でした。


はか の まえ に 

the figure of the long-buried woman, erect before her tomb,


片方かたほう の  に すず を 

--in one hand clutching a bell,


もう 一方いっぽう の  に


 の したたる くび を

って いた の です。

in the other the dripping head.


しばらく


三人さんにん は

だまって って い ました。

. . . For a moment the three stood numbed.


それから

一人ひとり の さむらい は


念仏ねんぶつ を となえ ながら、

かたな を いて


その おんな の からだ を

り ました。

Then one of the men-at-arms, uttering a Buddhist invocation, drew, and struck at the shape.


すぐに

それ は 地面じめん に くずれ ました。


きょうかたびら、ほねかみ が

散乱さんらん し ました。

Instantly it crumbled down upon the soil, --an empty scattering of grave-rags, bones, and hair;


すず が


り ながら

ころがり ました。

--and the bell rolled clanking out of the rum.


しかし


筋肉きんにく の ない みぎ は、

手首てくび から はなれても


まだ

のたうって い ました。

But the fleshless right hand, though parted from the wrist, still writhed;


その ゆび は

やはり


 の したたる くび を つかんで い ました。

--and its fingers still gripped at the bleeding head,


そして


黄色きいろ の かに の はさみ が

ちた 果物くだもの を つかんで はなさ ない ように


ひきさき、きざんで い ました。

--and tore, and mangled, --as the claws of the yellow crab cling fast to a fallen fruit. . .


***


『これ は ひどい はなし だ』

[" That is a wicked story,"


わたし は

これ を かたった 友人ゆうじん に い ました。

I said to the friend who had related it.


んで 復讐ふくしゅう する の なら


 もし やる なら

 おとこ に たいして やる べき だ』

"The vengeance of the dead --if taken at all -- should have been taken upon the man."


おとこ は そう かんがえ ます』

"Men think so,"


かれ は こたえ ました。

he made answer.


『しかし、

 それ は おんな の かんかた では あり ません』

"But that is not the way that a woman feels.……"


かれ の った こと は ただしかった。

He was right.]





Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.




Thursday, March 26, 2020

Japanese Short Stories よだかの星 The Nighthawk Star: Kenji Miyazawa



よだか の ほし


The Nighthawk Star


宮沢みやざわ 賢治けんじ


Kenji Miyazawa


よだかyodaka = よたかyotaka夜鷹よたか:Nighthawk


Nighthawk was truly an ugly bird. His face was covered in splotches as if he had been splattered with miso, and his beak was flat and split all the way back to his ears. His legs were so frail that he could not walk at all. He was such a sight that just seeing him made other birds uncomfortable.

よたか は、


じつ

みにくい とり です。

■みにくい:ugly ■とり:bird

Nighthawk was truly an ugly bird.


かお は、


ところどころ、味噌みそ を つけた ように

まだら で、

かお:face ■まだら:spotted

His face was covered in splotches as if he had been splattered with miso,


くちばし は、

ひらたくて、


みみ まで さけて い ます。

■くちばし:beak ■ひらたい:flat

and his beak was flat and split all the way back to his ears.


あし は、

まるで よぼよぼ で、


すこしも あるけ ません。

あし:legs ■よぼよぼ:frail

His legs were so frail that he could not walk at all.


ほか の とり は、


もう、よたか の かお を た だけ でも、

いや に なって しまう の でした。

■いや:uncomfortable

He was such a sight that just seeing him made other birds uncomfortable.


たとえば、


ひばり も、

あまり つくしい とり では あり ません が、

■ひばり:Skylark

Now Skylark was not a particularly attractive bird, either,


よたか より は、

ずっと うえ だ


と おもって い ました ので

■~ので:because

but knowing that he looked better than Nighthawk, at least,


夕方ゆうがた など、

よたか に あう と、

upon seeing him in the evening


さも さも いや そうに、


ゆっくり と

 を つぶり ながら、


くび を そっぽける の でした。

■つぶる:close ■そっぽける:turn away

he would make a sour face and turn away, silently closing his eyes.


もっと ちいさな おしゃべり の とり など は、


いつでも

よたか の まえ で


悪口わるくち を い ました。

■おしゃべり:talkative ■悪口わるくち:contempt

The smaller, more talkative birds would speak of him with contempt right in front of him, saying,


「ヘン。

"Look,


 また た ね。

it's him again.


 まあ、

 あの ざま を ごらん

■ざま(=姿すがた):figure, looks ■ごらん(=  なさい):Look!

Would you just look at that?


 ほんとう に、

 とり の 仲間なかま の つらよごし だよ。」

■つらよごし:disgrace

He's truly a disgrace to birds."


「ね、

"Indeed.


 まあ、

 あの くち の おおきい こと さ。

Look at how big his mouth is!


 きっと、

 かえる の 親類しんるい か なにか なん だよ。」

親類しんるい:relative

Maybe he's actually some kind of frog."


こんな 調子ちょうし です。

And so on.


おお、

よたか で ない ただ の たか ならば、

■たか:hawk

Now if he had been a real hawk


こんな なまはんか の ちいさい とり は、


もう 名前なまえ を いた だけ でも、

ぶるぶる ふるえて、

なまはんか:insignificant ■ぶるぶる ふるえる:tremble

then just mentioning his name would cause these insignificant little birds to tremble


顔色かおいろ を て、

からだ を ちぢめて、


 の かげ に でも

かくれた でしょう。

顔色かおいろ を える:go pale ■:leaves

and go pale and cower and hide among the leaves!


ところが

たか は、


ほんとう は


たか の 兄弟きょうだい でも 親類しんるい でも

あり ません でした。

兄弟きょうだい:brother

But Nighthawk wasn't a hawk, or even related to the hawks.


かえって、

よたか は、


あの うつくしい かわせみ や、

とり の なか の 宝石ほうせき の ような はちすずめ の

にいさん でした。

■かわせみ:Kingfisher ■宝石ほうせき:jewel ■はちすずめ:Hummingbird

He was actually the elder brother of the beautiful Kingfisher, and of that avian jewel, Hummingbird.


はちすずめ は

はな の みつ を たべ、

みつ:nectar

Hummingbird sipped the nectar of flowers


かわせみ は

さかな を べ、

さかな:fish

and Kingfisher ate fish,


たか は

羽虫はむし を とって たべる の でした。

羽虫はむし:bugs

but Nighthawk caught and ate bugs.


それに


よたか には、


するどい つめ も するどい くちばし も

あり ません でした から、

つめ:talon

Nighthawk didn't have sharp talons or a sharp beak, either,


どんなに よわい とり でも、


よたか を こわがる はず は

なかった の です。

so not even the weakest bird was afraid of him.

So one might wonder why he was named so, and the reason is because his wings were inordinately strong, and so he resembled a hawk when he soared upon the wind. He also had a powerful cry that was not unlike that of a hawk. Hawk, of course, was very conscious of this, and hated it.……

それなら、


たか という  の ついた こと は

不思議ふしぎな ようです が、

不思議ふしぎ:wonder …

So one might wonder why he was named so,


これ は、ひとつ は


よたか の はね が

無暗むやみ に つよくて、

■はね:wings ■無暗むやみに:inordinately

and the reason is because his wings were inordinately strong,


かぜ を って ける とき など は、


まるで

たか の ように えた こと と、

ける:soar

and so he resembled a hawk when he soared upon the wind.


 ひとつ は


なきごえ が するどくて、


やはり どこか

たか に て いた ため です。

■もひとつ = もう ひとつ:one more ■なきごえ:cry

He also had a powerful cry that was not unlike that of a hawk.


もちろん、

たか は、


これ を

ひじょうに にかけて


いやがって い ました。

 に かける:conscious ■いやがる:hate

Hawk, of course, was very conscious of this, and hated it.


それ です から、


よたか の かお さえ る と、

かた を いからせて、

かた を いからせる:square his shoulders (いかる:get angry)

はやく 名前なまえ を あらためろ名前なまえ を あらためろ

と、いう の でした。

■あらためる = える:change

Every time he saw Nighthawk he would tell him, "Change your name! Change your name!"


One evening, Hawk even came to Nighthawk's home. "Hey! You there! You still haven't changed your name! ……

ある 夕方ゆうがた

とうとう、


たか が


よたか の うち へ

やって まい ました。

■やってまいる = やってる:come

One evening, Hawk even came to Nighthawk's home.


「おい。

"Hey!


 いる かい。

You there!


 まだ

 おまえ は


 名前なまえ を かえ ない のか。

You still haven't changed your name!


 ずいぶん

 おまえ も はじらず だな。

はじ ら ず:ashamed (ず=not)

You should be ashamed.


 おまえ と おれ では、


 よっぽど 人格じんかく が

 ちがう ん だよ。

人格じんかく:character

We're completely different, you and I.


 たとえば


 おれ は、

 あおい そら を どこまででも んでく。

■どこまで でも:limitless, endless

I can fly through the blue sky all day long,


 おまえ は、

 くもって うすぐらい  か、


 よる で なくちゃ

 て  ない。

■なくちゃ = なけれ ば:if not

and you only come out when the sun is clouded over, or at dark.


 それから、


 おれ の くちばし や つめ を

 ろ。

Just look at this beak and these talons,


 そして、


 よく おまえ の と

 くらべて る が いい。」

る が いい = ろ!

and then look at your own!"


たか さん。

"Mr. Hawk,


 それ は

 あんまり 無理むり です。

無理むり:cannot

I can't change my name!


 わたし の 名前なまえ は


 わたし が

 勝手かって つけた の では あり ません。

勝手かってに:by my own opinion

I didn't take this name myself,


 かみさま が くださった の です。」

かみさま:God ■くださる = くれる:give it to me

God gave it to me."


「いいや。

"No,


 おれ の  なら、


 かみさま から もらった の だ

 と っても よかろう が、

■もらう:get ■よかろう = い だろう

I'm the one who got his name from God.


まえ のは、


わば


おれ と よる と、両方りょうほう から

て いる んだ。

わ ば:in a sense ■りる:borrow

In a sense, you're just borrowing my name. And Night's.


 さあ かえせ。」

Now give them back."


たか さん。


 それ は 無理むり です。」

"I can't do that, Mr. Hawk!"


無理むり じゃ ない。

"Of course you can.


 おれ が


 いい  を

 おしえて やろう。


I'll give you a good name to take its place.


 市蔵いちぞう という ん だ。

市蔵いちぞう:Ichizo

How about Leonard?


 市蔵いちぞう とな。

Yeah, Leonard.

 いい  だろう。


I like that.

…… So to officially change your name you have to make it public, right? To do that you need to hang a sign that says `Leonard' around your neck, and go around to everyone's home, bowing and saying `From this day on, I am to be known as Leonard.'" "I could never do that!" ……

 そこで、


 名前なまえ を える には、

 改名かいめい の 披露ひろう という もの を

改名かいめい:change your name ■披露ひろう:make it public

 し ない と いけない

■~ し ない と いけない = ~ し なければならない:must, should

So to officially change your name you have to make it public,


 いい か。


right?


 それ は な、


 くび へ

 市蔵いちぞう と いた ふだ を

 ぶらさげて、

■ぶらさげる:hang

To do that you need to hang a sign that says `Leonard' around your neck,


 わたし は

 今日きょう から

 市蔵いちぞう と もう ます

もうす = 

 と、 って、

 みんな の ところ を おじぎ して まわる のだ。」

and go around to everyone's home,
bowing and saying
`From this day on, I am to be known as Leonard.'"


「そんな こと は

 とても 出来でき ません。」

"I could never do that!"


「いいや。 出来できる。

"Sure you can!


 そう しろ。

So do it!


 もし

 あさって の あさ まで に、


 おまえ が

 そう し なかったら、

If you haven't done it by the morning of the day after tomorrow,


 もう すぐ、

 つかみころ ぞ。

■つかみころす:squeeze you to death

I'll come and squeeze you to death in my claws.


 つかみころして しまう から、


 そう おもえ。


To death, I say!


 おれ は

 あさって の あさ はやく、


 とり の うち を

 一軒いっけん ずつ まわって、

On the morning of the day after tomorrow I'm going to go to every house


 おまえ が た か どうか を

 いて あるく。

and ask if you've been by.


 一軒いっけん でも

  なかった という いえ が あったら、


 もう 貴様きさま も


 その とき が おしまい だぞ。」

貴様きさま = おまえ:you ■おしまい:end

If I find even one home that you haven't visited, that will be the end of you!"


「だって


 それ は

 あんまり 無理むり じゃ あり ません か。

"But there's no way I could do it!


 そんな こと を する くらい なら、


 わたし は もう

 んだ ほう が まし です。

■~ほう が まし:rather

I would rather die!


 いま すぐ

 ころして ください。」

Please, just kill me now!"


「まあ、よく、

 あと で かんがえて ごらん

■~ごらん:try

"Oh, come now, think it over.


 市蔵いちぞう なんて

 そんなに わるい  じゃ ない よ。」


Leonard is a pretty good name."


たか は

おおきな はね を 一杯いっぱい に ひろげて、


自分じぶん の  の ほう へ

んで かえってき ました。

:nest

The hawk spread out his wings and flew back towards his nest.


The nighthawk stood there with his eyes closed in thought. Why do they hate me so? Because my face looks like it's been splattered with miso, and because my beak is odd? ……

よたか は、

じっと  を つぶっ


かんがえ ました。

■つぶる:close

The nighthawk stood there with his eyes closed in thought.


一体いったい ぼく は、


 なぜ

 こう みんな に いやがられる の だろう。

■いやがる:hate

Why do they hate me so?


 ぼく の かお は、

 味噌みそ を つけた ようで、

Because my face looks like it's been splattered with miso,

 くち は けてる から か なあ。

けて る = けて いる:split

and because my beak is odd?


それだって、


ぼく は いままで、

なんにも わるい こと を した こと が ない

■した こと が ない:haven't done

Even so, I haven't done anything wrong!


 あかぼう の めじろ が

  から ちて いた とき は、


 たすけて

  へ れてって やった。

あかぼう:chick ■めじろ:Whiteeye

I remember that day when I helped the Whiteeye chick back to its nest after it fell out.


 そしたら

 めじろ は、


 あかぼう を


 まるで ぬすびと から でも とりかえす ように

 ぼくから ひきはなした んだ なあ。

■そしたら = そう したら ■ぬすびと:thief

Its mother snatched it from me as if rescuing her baby from a thief.


 それから


 ひどく

 ぼく を わらった っけ。


And then she just laughed so hard at me.


 それに


 ああ、

 今度こんど は


 市蔵いちぞう だ なんて、

And now I have to change my name to Leonard?


 くび へ ふだ を かける なんて、

Hang a sign about my neck?


 つらい はなし だ なあ。)

Oh, how terrible…


It was already getting dark. Nighthawk flew from his nest. The clouds glowed menacingly, and hung low in the sky. The nighthawk seemed to almost rub against them as he silently flew about.……

あたり は、


もう

うすぐらく なって い ました。

It was already getting dark.


たか は

 から し ました。

Nighthawk flew from his nest.


くも が

意地悪いじわる ひかって、


ひくく たれて い ます。

意地悪いじわるく:menacingly ■ひくく たれる:hang low

The clouds glowed menacingly, and hung low in the sky.


たか は

まるで くも と すれすれに なって、

■すれすれ:right on the surface of …

おと なく

そろ を びまわり ました。

The nighthawk seemed to almost rub against them as he silently flew about.


それから にわかに


よたか は

くち を おおきく ひらいて、

■にわかに:suddenly

Nighthawk suddenly opened his mouth wide,


はね を まっすぐに ひろて、


まるで  の ように

そら を よこぎり ました。

ひろげる:spread ■:arrow

held his wings out straight,
and cut across the sky like an arrow.


ちいさな 羽虫はむし が


幾匹いくひき 幾匹いくひき

その のど に はいり ました。

幾匹いくひき も:many

He trapped countless small insects in his mouth.


からだ が

つち に つく か つか ない うち に、

■つく:touch

よたか は


ひらり と また

そら へ はねあがり ました。

Almost as soon as he touched ground he lit off again.


もう

くも は 鼠色ねずみいろ に なり、

鼠色ねずみいろ:gray

The clouds had turned gray,


むこう の やま には


山焼やまやけ の  が

まっ です。

and the setting sun colored the faraway mountaintops with crimson fire.


たか が

おもって ぶ とき は、


そら が まるで ふたつ に れた ように

おもわれ ます。

Nighthawk flew so forcefully that he seemed to slice the sky into two.


一匹いっぴき の 甲虫かぶとむし が、


たか の のど に はいって、

ひどく もがき ました。

甲虫かぶとむし ■のど:throat ■もがく:squirm

A beetle flew into his mouth and squirmed about.


よたか は


すぐ それ を

みこみ ました が、

みこむ:swallow

The nighthawk swallowed it down,


そのとき


なんだか

せなか が ぞっと した ように


おもい ました。

なんだか:for some reason ■せなか:back

but for some reason doing so sent a chill down his back.


くも は

もう まっくろく、

The clouds were now pitch black,


ひがし の ほう だけ

やまやけ の  が あかく うつって、


おそろしい ようです。

and only the mountains to the East cast the frightening reflection of the red setting sun.


よたか は


むね が つかえた ように

おもい ながら、

■むね:chest

Feeling an ache in his chest,


また

そら へ のぼり ました。

Nighthawk again took off into the sky.


また

一匹いっぴき の 甲虫かぶとむし が、


たか の のど に、

はいり ました。

Again a beetle flew into his mouth,


そして


まるで よたか の のど を ひっかい

ばたばた し ました。

■ひっかく:scratch

and there it squirmed, scratching his throat.


よたか は


それ を

無理むり のみこんで しまい ました が、

無理むりに:force oneself to …

After great effort Nighthawk managed to swallow the beetle,


そのとき

きゅうに むね が どきっと して、

むね:heart

but doing so caused his heart to leap,


たか は


大声おおごえ を あげて

し ました。

大声おおごえ:loud voice ■く:cry

and he cried out in a loud voice.


き ながら


ぐるぐる ぐるぐる そら を

めぐった の です。

Crying, he flew around and around, making circles in the sky.


Oh, I kill so many beetles and insects every night. And now I'm to be killed by the hawk. So this is what it feels like. Oh, I can't stand this. I'll stop eating insects, and starve to death. No, Hawk will kill me before that happens. No, before that happens I'll fly far, far away.

(ああ、

 かぶとむし や、たくさん の 羽虫はむし が、


 毎晩まいばん

 ぼく に ころされる。

Oh, I kill so many beetles and insects every night.


 そして

 その ただ ひとつ の ぼく が


 こんど は

 たか に ころされる。

And now I'm to be killed by the hawk.


 それ が

 こんなに つらい のだ。

■つらい:painful

So this is what it feels like.


 ああ、つらい、つらい。

Oh, I can't stand this.


 ぼく は


 もう むし を たべ ないで

 て のう。

える:starve

I'll stop eating insects, and starve to death.


 いや その まえ


 もう たか が

 ぼく を ころす だろう。

No, Hawk will kill me before that happens.


 いや、その まえに、


 ぼく は

 とお の とおく の そら の むこう に


 ってしまおう。)

とおく:far

No, before that happens I'll fly far, far away.


The red light from the sun spread like water, setting the clouds on fire. Nighthawk flew straight to the home of his brother, Kingfisher. When he got there Kingfisher had just awoken, and was looking at the burning mountains.……

山焼やまやけ の  は、


だんだん

みず の ように ながれて

ひろがり、

The red light from the sun spread like water,


くも も

あかく て いる よう です。

える:burn

setting the clouds on fire.


よたか は

まっすぐに、


おとうと の かわせみ の ところ へ

んでき ました。

Nighthawk flew straight to the home of his brother, Kingfisher.


きれいな かわせみ も、

丁度ちょうど きて

When he got there Kingfisher had just awoken,


とおく の 山火事やまかじ を

て いた ところ でした。

山火事やまかじ:mountain fire

and was looking at the burning mountains.


そして


よたか の りてた の を 

い ました。

Seeing Nighthawk land, he spoke:


にいさん。今晩こんばんは。

"Well hello, brother.

 なにか きゅう よう です か。」

きゅうの:urgent ■よう:something to do

To what do I owe the pleasure?"


「いいや、

"Nothing.

 ぼく は

 今度こんど とおい ところ へ く から ね、


 その まえ

 ちょっと おまえ に  に た よ。」

う:see, meet

I just came to say goodbye. I'm leaving for a place far, far away."


にいさん。

"Brother!


 っちゃ いけません よ。

っちゃ = って は

You can't leave!


 蜂雀はちすずめ も

 あんな とおく に いる ん です し、


 ぼく

 ひとりぼっち に なってしまう じゃ ありません か。」

■ひとりぼっち:alone

With Hummingbird so far away now, I'll be left all alone!"


「それ は ね。

 どうも 仕方しかた ない のだ。

"I'm sorry, it can't be helped.


 もう

 今日きょう は


 なにも わ ないで くれ。

Please, speak no further on this today.


 そして

 おまえ も ね、


 どうしても とら なければならない とき の ほか は


 いたずらに

 おさかな を ったり し ない ように して くれ。

■いたずらに:thoughtlessly

And please, try not to kill any more fish than is absolutely necessary.


 ね、さよなら。」

Good bye, now."


にいさん。

"Brother,


 どうした ん です。

what's wrong with you?


 ねえ

 もう ちょっと って ください。」

Please, stay a little longer."


「いや、

 いつまで いても おんなじ だ。

■おんなじ = おなじ:same

"No, staying any longer won't change things.


 はちすずめ へ、


 あとで

 よろしく って やって くれ。

Please give my regards to Hummingbird.


 さよなら。

Goodbye.


 もう

 あわ ない よ。

I'm afraid we'll never meet again.


 さよなら。」

Goodbye."


Nighthawk returned to his home in tears. The short summer night was already coming to an end. ……Nighthawk gave a high twitter. He then thoroughly straightened up his nest, preened his feathers, and flew from his nest again.……

よたか は

き ながら


自分じぶん の おうち へ

かえって ました。

Nighthawk returned to his home in tears.


みじかい なつ の よる は

もう あけ かかって い ました。

よるける:dawn

The short summer night was already coming to an end.


シダ の  は、

よあけ の きり を って、


あおく つめたく

ゆれ ました。

■シダ:fern ■きり:mist

The fern leaves absorbed the mist as they waved blue and cold.


よたか は


たかく きしきしきし と

き ました。

Nighthawk gave a high twitter.


そして

 の なか を きちんと かたづけ、

He then thoroughly straightened up his nest,


きれいに からだじゅう の はね や  を そろえて、

preened his feathers,


また

 から し ました。

and flew from his nest again.


きり が はれて、

The mist had cleared,


さま が

丁度ちょうど ひがし から のぼり ました。

■おさま(太陽たいよう):sun

and the sun had just risen in the East.


たか は

ぐらぐら する ほど まぶしい の を こらえて、

■ぐらぐら する:feel dizzy ■まぶしい:dazzling ■こらえる:endure

Ignoring the dizzying brightness,


 の ように、


そっち へ

んでき ました。

Nighthawk flew like an arrow in that direction.


「おさん、おさん。

"Mr. Sun, Mr. Sun!


 どうぞ わたし を あなた の ところ へ

 れてって ください。

れてって = れてって:bring me to …

Please bring me to you!


 けて んでも

 かまいません

■かまい ません:don't care

I don't care that I'll burn and die.


 わたし の ような みにくい からだ でも


 ける とき には


 ちいさな ひかり を

 す でしょう。

■みにくい:ugly

Even an ugly body like mine will shine as it burns!


 どうか わたし を れてって ください。」

Please, take me!"


っても っても、

But no matter how far he flew,


さま は

ちかく なり ません でした。

he didn't get any closer to the sun.


かえって

だんだん ちいさく とおく なり ながら

■かえって:on the contrary

さま が

い ました。

The sun seemed to get smaller and farther, even, and said


「おまえ は よたか だな。

"Nighthawk, isn't it?


 なるほど、

 ずいぶん つらかろう

■つらかろう = つらい だろう

Yes, yes, I know your pain.


 今度こんど そら を んで、


 ほし に

 そう たのんで ごらん。

ほし:star ■たのむ:ask

But you should try talking to the stars.


 おまえ は

 ひる の とり では ない の だから な。」

■ひる:day

You're not a day bird, you know."


たか は


おじぎ を ひとつ した

と おもい ました が、

■おじぎ:bow

Nighthawk tried to give a bow,


きゅうに ぐらぐら して

but suddenly became dizzy


とうとう


野原のはら の くさ の うえ に

ちて しまい ました。

野原のはら:fields

and fell back down into the fields.


そして

まるで ゆめ を て いる よう でした。

ゆめ を る:dream

He felt as if he were having a dream.


からだ が


ずうっと あか や  の ほし の あいだ を

のぼって ったり、

He saw his body climbing up to between the red and yellow stars,


どこまでも

かぜ に ばされたり、

he saw himself blown endlessly by the wind,


また たか が 

からだ を つかんだり した ようでした。

he saw himself trapped in Hawk's talons.


He opened his eyes. The dew from the pampas grass had dripped on him. It was already night, and the sky was blue-black and filled with blinking stars. Nighthawk flew back up into the sky.……

つめたい もの が


にわかに

かおに ち ました。

■にわかに:suddenly

Something cold plopped on his face.


よたか は

 を ひらき ました。

He opened his eyes.


一本いっぽん の わかい すすき の  から


つゆ が

したたった の でした。

■すすき:pampas ■つゆ:dew ■したたる:drip

The dew from the pampas grass had dripped on him.


もう

すっかり よる に なって、

It was already night,


そら は あおぐろく、

and the sky was blue-black


一面いちめん の ほし が

またたいて い ました。

■またたく:blink

and filled with blinking stars.


よたか は

そら へ びあがり ました。

Nighthawk flew back up into the sky.


今夜こんや も


やまやけ の  は

まっか です。

The mountains were again red with the setting sun.


よたか は

その  の かすかな  と、


つめたい ほしあかり の なか を

とび めぐり ました。

り:glow

Nighthawk flew about in that faint glow and among the cold light of the stars.


それから

もう いっぺん び めぐり ました。

Then he flew off again.


そして

おもって


西にし の そら の あの うつくしい オリオンのほし の ほう に、

まっすぐに び ながら


さけび ました。

■オリオン の ほし = オリオン:Orion

He headed west, straight towards the beautiful constellation of Orion, shouting


「おほし さん。

"Oh, star!


 西にし の あおじろい おほし さん。

Blue-white star of the West!


 どうか わたし を


 あなた の ところ へ

 れてって ください。

Please take me to you!


 けて んでも かまい ません。」

I don't care that I will be burned to death!"


オリオン は

いさましい うた を つづけ ながら

いさましい:heroic

But Orion just continued singing his heroic song,


よたか など は

てんで 相手あいて に し ません でした。

■てんで ~ない:not … least … ■相手あいて に する:pay attention

and didn't pay Nighthawk the least bit of attention.


よたか は

きそう に なって、

The Nighthawk almost began to cry,


よろよろ と ちて、

and spiraled back to the ground.


それから

やっと ふみとまって、


もう いっぺん とび めぐり ました。

He finally landed and took off again, circling once.


それから、

みなみ の 大犬座おおいぬざ の ほう へ


まっすぐに び ながら

さけび ました。

大犬座おおいぬざ:Canis Major

Then he flew straight towards Canis Major in the south, shouting,


「おほし さん。

"Oh, Star!


 みなみ の あおい おほし さん。

Blue star of the South!


 どうか

 わたし を あなた の ところ へ

 つれてってください。

Please take me to you!


 やけて んでも かまい ません。」

I don't care that I will be burned to death!"


大犬おおいぬ は

あお や むらさき や  や


うつくしく せわしく またたき ながら

い ました。

The Great Dog blinked blue and purple and yellow and said,


馬鹿ばか を う な。

馬鹿ばか:foolishness

"Silence with such foolishness.


 おまえ なんか 一体いったい どんな もの だい

■~だい = ~だ?

Who do you think you are?


 たかが とり じゃ ないか。

■たかが:just

You're just a bird.


 おまえ の はね で

 ここまで る には、


 億年おくねん 兆年ちょうねん 億兆年おくちょうねん だ。」

It would take you millions, billions, trillions of years to fly this far with those wings of yours!"


そして

また べつ の ほう を き ました。

and with that, he turned away.


よたか は


がっかり して、

よろよろ ちて、

Disappointed again, Nighthawk spiraled back to the Earth.


それから

また へん び めぐり ました。

He then flew back up and circled twice.


それから


また おもって

きた の 大熊星おおくまぼし の ほう へ


まっすぐに び ながら

さけび ました。

大熊星おおくまぼし = 大熊座おおくまざ:Ursa Major

This time he flew north towards Ursa Major, shouting


きた の あおい おほし さま、

"Blue star of the North!


 あなた の ところ へ

 どうか わたし を れてってください。」

Please take me to you!"


大熊星おおくまぼし は

しずかに い ました。

The Great Bear answered,


余計よけいな こと を

 かんがえる もの では ない

■~ する もの では ない = ~ する な:Don't …

"Don't waste your time with such silliness.


 すこ

 あたま を ひやして  なさい。

You should go cool your head.


 そうう とき は、


 氷山ひょうざん の いて いる

 うみ の なか へ  か、

氷山ひょうざん:iceberg ■む:jump into

Jumping into an iceberg-filled ocean might help,


 ちかく に うみ が なかったら、


 こおり を うかべた コップ の みず の なか へ

 む の が


 一番いちばん だ。」

一番いちばん:best

or if there is no ocean near you, try diving into a cup filled with ice water."


よたか は

がっかり して、

Disappointed again,


よろよろ ちて、

Nighthawk spiraled back to the Earth,


それから また、よんへん そら を めぐり ました。

and then flew back up and circled four times.


そして

もう 一度いちど


ひがし から いま のぼった

あまがわ の むこう ぎし の わしほし に


さけび ました。

あまがわ:the Milky Way ■わしほし = わし:the eagle Aquila

He then flew east again, towards the eagle Aquila on the far bank of the just-risen the Milky Way, shouting,


ひがし の しろい おほし さま、

"White star of the East!


 どうか

 わたし を あなた の ところ へ


 れてってください。

Please take me to you!


 やけて んでも かまい ません。」

I don't care that I will be burned to death!"


わし は

横柄おうへい い ました。

横柄おうへいに:proudly

The Eagle proudly stated,


「いいや、

 とても とても、はなし にも なんにも ならん

はなし に なら ない:that will never happen

"No, no, that will never happen.


ほし に なる には、

それ 相応そうおう の 身分みぶん で なくちゃいかん

相応そうおう:certain level ■なくちゃいかん = なければならない:should, must

You need a certain level of birth to become a star.


 また よほど かね も いる のだ。」

■いる = る:need

That and a lot of money."


Nighthawk lost all hope, and closing his wings began to fall to the ground. When his weak legs were just a yard from the ground he suddenly twisted back up into the heavens like a whirlwind. ……

よたか は

もう すっかり ちから を おとして しまって、

Nighthawk lost all hope,


はね を じて、

 に ちてき ました。

and closing his wings began to fall to the ground.


そして


もう すこし で

地面じめん に その よわいい あし が つく という とき、

When his weak legs were just a yard from the ground


よたか は

にわかに


のろし の ように そら へ とびあがり ました。

■のろし:a signal fire

he suddenly twisted back up into the heavens like a whirlwind.


そら の なか ほど へ て、

Upon reaching the high heavens


よたか は


まるで わし が

くま を おそう とき する ように、


ぶるっと からだ を ゆすって

くま:bear

he spun around like an eagle attacking a bear


 を さかだて ました。

and stood his feathers on end.


それから


キシキシキシキシキシッ と

たかく たかく さけび ました。

He let out a high, high screech.


その こえ は

まるで たか でした。

His voice was like a hawk's.


野原のはら や はやし に ねむって いた

ほか の とり は、


みんな  を さまして、

The other birds asleep in the fields and the forest all woke up


ぶるぶる ふるえ ながら、

いぶかしそうに ほしぞら を あげ ました。

■いぶかしそうに:curiously

and, shaking, looked curiously up into the starry sky.


Nighthawk continued on higher and higher, straight up into the sky. The sun on the mountains looked like the glowing end of a cigarette. Nighthawk climbed and climbed.……

たか は、

どこまでも、どこまでも、


まっすぐに そら へ

のぼってき ました。

Nighthawk continued on higher and higher, straight up into the sky.


もう 山焼やまやけ の  は

たばこ の 吸殻すいがら くらい に しか え ません。

■たばこ の 吸殻すいがら:a cigarette end

The sun on the mountains looked like the glowing end of a cigarette.


よたか は

のぼって のぼって き ました。

Nighthawk climbed and climbed.


さむさ で


いき は

むね に しろく こおり ました。

The cold froze his breath upon his breast.


空気くうき が うすく なった ため に、


はね を

それ  それ は せわしく

うごかさ なければなりません でした。

■それ は それ は = とても:very

The air became thinner, causing him to beat his wings faster and faster.


それなのに、


ほし の おおきさ は、

さっき と すこしも かわり ません。

Nonetheless, the stars grew no larger.


つく いき は

ふいご の よう です。

■いき を つく = いき を する:breathe ■ふいご:bellows

His chest pumped like a bellows.


さむさ や しも が


まるで つるぎ の ように

よたか を し ました。

The cold and frost pierced him like a sword.


よたか は


はね が

すっかり しびれて しまい ました。

■しびれる:numb

His wings grew numb.


そして

なみだぐんだ  を あげて


もう いっぺん そら を  ました。

■なみだぐんだ:tear-filled

He opened tear-filled eyes and once again looked up at the heavens.


And yes, that was the end of him.……

そう です。

And yes,


これ が

よたか の 最後さいご でした。

that was the end of him.


もう よたか は


ちて いる のか、

のぼって いる のか、


さかさ に なって いる のか、

うえ を いて いる の かも、


わかり ません でした。

He no longer knew if he was falling or climbing, upside down or right side up, or if he was still looking up.


ただ

こころもち は やすらかに、

■こころもち(心持こころもち) = 気持きもち:feeling ■やすらか:peaceful

But peace filled his heart,


その  の ついた おおきな くちばし は、

よこ に まがって は い ました が、

and though his bloody beak was slightly bent to one side,


たしかに

すこし わらって い ました。

there was a slight smile on it.


それから しばらく たって


よたか は

はっきり  を ひらき ました。

After a time Nighthawk opened his eyes wide.


そして


自分じぶん の からだ が いま

りん の  の ような


あおい うつうくしい ひか に なって、

しずかに えて いる の を


 ました。

りん:phosphorous

He saw that his body had become a beautiful light, blue like a phosphorous flame, burning silently.


すぐ となり は、

カシオペア でした。

Just next to him was Cassiopeia.


あまがわ の あおじろい ひかり が、

すぐ うしろ に なって い ました。

From just behind him shined the blue-white light of the Milky Way.


And Nighthawk's Star burned on. It burned on and forever on. It continues to burn, even now.

そして


よたか の ほし は

え つづけ ました。

And Nighthawk's Star burned on.


いつまでも いつまでも

え つづけ ました。

It burned on and forever on.


いまでも まだ

えて い ます。

It continues to burn, even now.






Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.