Tuesday, January 7, 2020

Ryunosuke Akutagawa: The Spider's Thread (1)(Ruby, Grammatical Analysis)



蜘蛛くもいと



芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ



いち



ある  の こと で ござい ます。



おしゃかさま は

極楽ごくらく の 蓮池はすいけ の ふち を、

ひとりで

ぶらぶら あるき に なって いらっしゃい ました。



いけ の なか に いて いる はす の はな は、

みんな たま の ように まっしろ で、

その まんなか に ある 金色きんいろ の ずい から は、

なんとも え ない い におい が、

たえまなく あたり へ あふれて おり ます。



極楽ごくらく は

丁度ちょうど あさ なので ござい ましょう。



***



やがて

おしゃかさま は

その いけ の ふち に たたずみ に なって、



みず の おもて を おおって いる

はす の  の あいだ から、

ふと

した の 様子ようす を 御覧ごらん に なり ました。



この 極楽ごくらく の 蓮池はすいけ の した は、

丁度ちょうど 地獄じごく の そこ に

あたって おり ます から、



水晶すいしよう の ような みず を

とおして、

三途さんず の かわ や

はり の やま の 景色けしき が、

丁度ちょうど のぞき眼鏡めがね を る ように、

はっきりと える ので ござい ます。



***



すると その 地獄じごく の そこ に、

カンダタ とう おとこ が 一人ひとり

ほか の 罪人ざいにん と いっしょに うごめいて いる 姿すがた が、

 に まり ました。



この カンダタ とう おとこ は、

ひと を ころしたり いえ に  を つけたり、

いろいろ 悪事あくじ を はたらいた

大泥坊おおどろぼう で ござい ます が、



それでも

たった ひとつ、い こと を

いたした おぼえ が ござい ます。



と もうし ます のは、



ある とき

このおとこ が

ふかい はやし の なか を とおり ます と、



ちいさな 蜘蛛くも が 一匹いっぴき

みちばた を って く のが

え ました。



そこで カンダタ は 早速さっそく あし を げて、

み ころそう と いたし ました が、



「いや、いや、

 これ も ちいさい ながら、

 いのち の ある もの に ちがい ない。



 その いのち を

 無暗むやみに とる とう こと は、

 いくら なんでも 可哀かわいそう だ。」



と、こう きゅうに おもかえして、



とうとう その 蜘蛛くも を ころさ ず に

たすけて やった から で ござい ます。



***



おしゃかさま は

地獄じごく の 様子ようす を 御覧ごらん に なり ながら、



この カンダタ には

蜘蛛くも を たすけた こと が ある の を

おもし に なり ました。



そうして

それだけ の い こと を した むくい には、

出来できる なら、

この おとこ を

地獄じごく から すくい して やろう

と 御考おかんがえ に なり ました。



さいわい、そば を  ます と、



翡翠ひすい の ような いろ を した

はす の  の うえ に、

極楽ごくらく の 蜘蛛くも が 一匹いっぴき



うつくしい 銀色ぎんいろ の いと を

かけて おり ます。



おしゃかさま は

その 蜘蛛くも の いと を

そっと 御手おて に 御取おとり に なって、



たま の ような 白蓮しらはす の あいだ から、

はるか した に ある 地獄じごく の そこ へ、

まっすぐに それ を おろし なさい ました。





Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.