Wednesday, January 15, 2020

SOSEKI NATSUME: KOKORO (2)(Ruby, Grammatical Analysis)



こころ



先生せんせいわたくし



夏目なつめ漱石そうせき







わたくし が その 掛茶屋かけぢゃや で

先生せんせい を た とき は、

先生せんせい が ちょうど 着物きもの を いで

これから うみ へ はいろう と する ところ であった。



わたくし は その とき 反対はんたい に

れた 身体からだ を かぜ に かして

みず から がって た。



二人ふたり の あいだ には

 を さえぎる 幾多いくた の くろい あたま が

うごいて いた。



特別とくべつ の 事情じじょう の ない かぎり、

わたくし は ついに 先生せんせい を

見逃みのがした かもれなかった。



それほど 浜辺はまべ が 混雑こんざつし、

それほど わたくし の あたま が 放漫ほうまん で あった にも かかわらず、

わたくし が すぐ 先生せんせい を 見付みつした のは、

先生せんせい が 一人ひとり の 西洋人せいようじん を

れて いた から である。



***



その 西洋人せいようじん の

すぐれて しろい 皮膚ひふ の いろ が、

掛茶屋かけぢゃや へ はいる や いなや、

すぐ わたくし の 注意ちゅうい を いた。



純粋じゅんすい の 日本にほん の 浴衣ゆかた を て いた かれ は、

それ を 床几しょうぎ の うえ に すぽりと ほうした まま、

腕組うでぐみ を して うみ の ほう を いて って いた。



かれ は

我々われわれ の 穿く 猿股さるまた ひとつ の ほか

何物なにもの も はだ に けて い なかった。



わたくし には それ が 第一だいいち 不思議ふしぎ だった。



わたくし は その 二日前ふつかまえ に

由井ゆいはま まで って、

すな の うえ に しゃがみ ながら、

ながい あいだ

西洋人せいようじん の うみ へ はいる 様子ようす を

ながめて いた。



わたくし の しり を おろした ところ は

すこし 小高こだかい おか の うえ で、

その すぐ わき が ホテル の 裏口うらぐち に なって いた ので、

わたくし の じっと して いる あいだ に、

大分だいぶ おおく の おとこ が

しお を び に た が、

いずれも どう と うで と もも は して い なかった。



おんな は 殊更ことさら にく を かくし がち であった。



大抵たいてい は

あたま に 護謨製ゴムせい の 頭巾ずきん を かぶって、

海老茶えびちゃ や こん や あい の いろ を

波間なみま に かして いた。



そういう 有様ありさま を

目撃もくげきした ばかり の わたくし の  には、

猿股さるまた ひとつ で まして

みんな の まえ に って いる この 西洋人せいようじん が

いかにも めずらしく えた。



***



かれ は やがて 自分じぶん の わき を かえりみて、

そこに こごんで いる 日本人にほんじん に、

一言ひとこと 二言ふたこと なにか いった。



その 日本人にほんじん は

すな の うえ に ちた 手拭てぬぐい を

ひろげて いる ところ で あった が、

それ を げる や いな や、

すぐ あたま を つつんで、

うみ の ほう へ あるした。



その ひと が すなわち 先生せんせい であった。



***



わたくし は たんに 好奇心こうきしん の ために、

ならんで 浜辺はまべ を りてく 二人ふたり の

後姿うしろすがた を 見守みまもって いた。



すると かれら は 真直まっすぐ に なみ の なか に

あし を んだ。



そうして 遠浅とおあさ の 磯近いそちかく に わいわい さわいで いる

多人数たにんず の あいだ を とおけて、

比較的ひかくてき 広々ひろびろした ところ へ る と、

二人ふたりとも およした。



かれら の あたま が ちいさく える まで

おき の ほう へ いて った。



それから かえして

また 一直線いっちょくせん に 浜辺はまべ まで もどってた。



掛茶屋かけぢゃや へ かえる と、

井戸いど の みず も び ず に、

すぐ 身体からだ を いて 着物きもの を て、

さっさと どこ へ か ってしまった。



***



かれら の った あと

わたくし は やはり もと の 床几しょうぎ に こし を おろして

烟草タバコ を かして いた。



その とき わたくし は ぽかん と し ながら

先生せんせい の こと を かんがえた。



どうも どこか で た こと の ある かお の ように おもわれて ならなかった。



しかし どうしても いつ どこで った ひと か

おもせ ず に しまった。



***



その とき の わたくし は

屈托くったく が ない という より むしろ 無聊ぶりょう に くるしんで いた。



それで 翌日あくるひ も また

先生せんせい に った 時刻じこく を 見計みはからって、

わざわざ 掛茶屋かけぢゃや まで かけて みた。



すると 西洋人せいようじん は  ないで

先生せんせい 一人ひとり 麦藁帽むぎわらぼう を かぶって

やってた。



先生せんせい は 眼鏡めがね を とって だい の うえ に いて、

すぐ 手拭てぬぐい で あたま を つつんで、

すたすた はま を りてった。



先生せんせい が 昨日きのう の ように

さわがしい 浴客よくかく の なか を とおけて、

一人ひとり で およした とき

わたくし は きゅうに その あと が け たく なった。



わたくし は あさい みず を

あたま の うえ まで はねかして

相当そうとう の ふかさ の ところ まで て、

そこから 先生せんせい を 目標めじるし に 抜手ぬきで を った。



すると 先生せんせい は 昨日さくじつ と ちがって、

一種いっしゅ の 弧線こせん を えがいて、

みょうな 方向ほうこう から きし の ほう へ

かえはじめた。



それで わたくし の 目的もくてき は ついに たっせられ なかった。



わたくし が おか へ がって

しずく の れる  を り ながら

掛茶屋かけぢゃや に はいる と、

先生せんせい は もう ちゃんと 着物きもの を 

ちがい に そと へ った。





Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.