Thursday, March 26, 2020

Japanese Short Stories よだかの星 The Nighthawk Star: Kenji Miyazawa



よだか の ほし


The Nighthawk Star


宮沢みやざわ 賢治けんじ


Kenji Miyazawa


よだかyodaka = よたかyotaka夜鷹よたか:Nighthawk


Nighthawk was truly an ugly bird. His face was covered in splotches as if he had been splattered with miso, and his beak was flat and split all the way back to his ears. His legs were so frail that he could not walk at all. He was such a sight that just seeing him made other birds uncomfortable.

よたか は、


じつ

みにくい とり です。

■みにくい:ugly ■とり:bird

Nighthawk was truly an ugly bird.


かお は、


ところどころ、味噌みそ を つけた ように

まだら で、

かお:face ■まだら:spotted

His face was covered in splotches as if he had been splattered with miso,


くちばし は、

ひらたくて、


みみ まで さけて い ます。

■くちばし:beak ■ひらたい:flat

and his beak was flat and split all the way back to his ears.


あし は、

まるで よぼよぼ で、


すこしも あるけ ません。

あし:legs ■よぼよぼ:frail

His legs were so frail that he could not walk at all.


ほか の とり は、


もう、よたか の かお を た だけ でも、

いや に なって しまう の でした。

■いや:uncomfortable

He was such a sight that just seeing him made other birds uncomfortable.


たとえば、


ひばり も、

あまり つくしい とり では あり ません が、

■ひばり:Skylark

Now Skylark was not a particularly attractive bird, either,


よたか より は、

ずっと うえ だ


と おもって い ました ので

■~ので:because

but knowing that he looked better than Nighthawk, at least,


夕方ゆうがた など、

よたか に あう と、

upon seeing him in the evening


さも さも いや そうに、


ゆっくり と

 を つぶり ながら、


くび を そっぽける の でした。

■つぶる:close ■そっぽける:turn away

he would make a sour face and turn away, silently closing his eyes.


もっと ちいさな おしゃべり の とり など は、


いつでも

よたか の まえ で


悪口わるくち を い ました。

■おしゃべり:talkative ■悪口わるくち:contempt

The smaller, more talkative birds would speak of him with contempt right in front of him, saying,


「ヘン。

"Look,


 また た ね。

it's him again.


 まあ、

 あの ざま を ごらん

■ざま(=姿すがた):figure, looks ■ごらん(=  なさい):Look!

Would you just look at that?


 ほんとう に、

 とり の 仲間なかま の つらよごし だよ。」

■つらよごし:disgrace

He's truly a disgrace to birds."


「ね、

"Indeed.


 まあ、

 あの くち の おおきい こと さ。

Look at how big his mouth is!


 きっと、

 かえる の 親類しんるい か なにか なん だよ。」

親類しんるい:relative

Maybe he's actually some kind of frog."


こんな 調子ちょうし です。

And so on.


おお、

よたか で ない ただ の たか ならば、

■たか:hawk

Now if he had been a real hawk


こんな なまはんか の ちいさい とり は、


もう 名前なまえ を いた だけ でも、

ぶるぶる ふるえて、

なまはんか:insignificant ■ぶるぶる ふるえる:tremble

then just mentioning his name would cause these insignificant little birds to tremble


顔色かおいろ を て、

からだ を ちぢめて、


 の かげ に でも

かくれた でしょう。

顔色かおいろ を える:go pale ■:leaves

and go pale and cower and hide among the leaves!


ところが

たか は、


ほんとう は


たか の 兄弟きょうだい でも 親類しんるい でも

あり ません でした。

兄弟きょうだい:brother

But Nighthawk wasn't a hawk, or even related to the hawks.


かえって、

よたか は、


あの うつくしい かわせみ や、

とり の なか の 宝石ほうせき の ような はちすずめ の

にいさん でした。

■かわせみ:Kingfisher ■宝石ほうせき:jewel ■はちすずめ:Hummingbird

He was actually the elder brother of the beautiful Kingfisher, and of that avian jewel, Hummingbird.


はちすずめ は

はな の みつ を たべ、

みつ:nectar

Hummingbird sipped the nectar of flowers


かわせみ は

さかな を べ、

さかな:fish

and Kingfisher ate fish,


たか は

羽虫はむし を とって たべる の でした。

羽虫はむし:bugs

but Nighthawk caught and ate bugs.


それに


よたか には、


するどい つめ も するどい くちばし も

あり ません でした から、

つめ:talon

Nighthawk didn't have sharp talons or a sharp beak, either,


どんなに よわい とり でも、


よたか を こわがる はず は

なかった の です。

so not even the weakest bird was afraid of him.

So one might wonder why he was named so, and the reason is because his wings were inordinately strong, and so he resembled a hawk when he soared upon the wind. He also had a powerful cry that was not unlike that of a hawk. Hawk, of course, was very conscious of this, and hated it.……

それなら、


たか という  の ついた こと は

不思議ふしぎな ようです が、

不思議ふしぎ:wonder …

So one might wonder why he was named so,


これ は、ひとつ は


よたか の はね が

無暗むやみ に つよくて、

■はね:wings ■無暗むやみに:inordinately

and the reason is because his wings were inordinately strong,


かぜ を って ける とき など は、


まるで

たか の ように えた こと と、

ける:soar

and so he resembled a hawk when he soared upon the wind.


 ひとつ は


なきごえ が するどくて、


やはり どこか

たか に て いた ため です。

■もひとつ = もう ひとつ:one more ■なきごえ:cry

He also had a powerful cry that was not unlike that of a hawk.


もちろん、

たか は、


これ を

ひじょうに にかけて


いやがって い ました。

 に かける:conscious ■いやがる:hate

Hawk, of course, was very conscious of this, and hated it.


それ です から、


よたか の かお さえ る と、

かた を いからせて、

かた を いからせる:square his shoulders (いかる:get angry)

はやく 名前なまえ を あらためろ名前なまえ を あらためろ

と、いう の でした。

■あらためる = える:change

Every time he saw Nighthawk he would tell him, "Change your name! Change your name!"


One evening, Hawk even came to Nighthawk's home. "Hey! You there! You still haven't changed your name! ……

ある 夕方ゆうがた

とうとう、


たか が


よたか の うち へ

やって まい ました。

■やってまいる = やってる:come

One evening, Hawk even came to Nighthawk's home.


「おい。

"Hey!


 いる かい。

You there!


 まだ

 おまえ は


 名前なまえ を かえ ない のか。

You still haven't changed your name!


 ずいぶん

 おまえ も はじらず だな。

はじ ら ず:ashamed (ず=not)

You should be ashamed.


 おまえ と おれ では、


 よっぽど 人格じんかく が

 ちがう ん だよ。

人格じんかく:character

We're completely different, you and I.


 たとえば


 おれ は、

 あおい そら を どこまででも んでく。

■どこまで でも:limitless, endless

I can fly through the blue sky all day long,


 おまえ は、

 くもって うすぐらい  か、


 よる で なくちゃ

 て  ない。

■なくちゃ = なけれ ば:if not

and you only come out when the sun is clouded over, or at dark.


 それから、


 おれ の くちばし や つめ を

 ろ。

Just look at this beak and these talons,


 そして、


 よく おまえ の と

 くらべて る が いい。」

る が いい = ろ!

and then look at your own!"


たか さん。

"Mr. Hawk,


 それ は

 あんまり 無理むり です。

無理むり:cannot

I can't change my name!


 わたし の 名前なまえ は


 わたし が

 勝手かって つけた の では あり ません。

勝手かってに:by my own opinion

I didn't take this name myself,


 かみさま が くださった の です。」

かみさま:God ■くださる = くれる:give it to me

God gave it to me."


「いいや。

"No,


 おれ の  なら、


 かみさま から もらった の だ

 と っても よかろう が、

■もらう:get ■よかろう = い だろう

I'm the one who got his name from God.


まえ のは、


わば


おれ と よる と、両方りょうほう から

て いる んだ。

わ ば:in a sense ■りる:borrow

In a sense, you're just borrowing my name. And Night's.


 さあ かえせ。」

Now give them back."


たか さん。


 それ は 無理むり です。」

"I can't do that, Mr. Hawk!"


無理むり じゃ ない。

"Of course you can.


 おれ が


 いい  を

 おしえて やろう。


I'll give you a good name to take its place.


 市蔵いちぞう という ん だ。

市蔵いちぞう:Ichizo

How about Leonard?


 市蔵いちぞう とな。

Yeah, Leonard.

 いい  だろう。


I like that.

…… So to officially change your name you have to make it public, right? To do that you need to hang a sign that says `Leonard' around your neck, and go around to everyone's home, bowing and saying `From this day on, I am to be known as Leonard.'" "I could never do that!" ……

 そこで、


 名前なまえ を える には、

 改名かいめい の 披露ひろう という もの を

改名かいめい:change your name ■披露ひろう:make it public

 し ない と いけない

■~ し ない と いけない = ~ し なければならない:must, should

So to officially change your name you have to make it public,


 いい か。


right?


 それ は な、


 くび へ

 市蔵いちぞう と いた ふだ を

 ぶらさげて、

■ぶらさげる:hang

To do that you need to hang a sign that says `Leonard' around your neck,


 わたし は

 今日きょう から

 市蔵いちぞう と もう ます

もうす = 

 と、 って、

 みんな の ところ を おじぎ して まわる のだ。」

and go around to everyone's home,
bowing and saying
`From this day on, I am to be known as Leonard.'"


「そんな こと は

 とても 出来でき ません。」

"I could never do that!"


「いいや。 出来できる。

"Sure you can!


 そう しろ。

So do it!


 もし

 あさって の あさ まで に、


 おまえ が

 そう し なかったら、

If you haven't done it by the morning of the day after tomorrow,


 もう すぐ、

 つかみころ ぞ。

■つかみころす:squeeze you to death

I'll come and squeeze you to death in my claws.


 つかみころして しまう から、


 そう おもえ。


To death, I say!


 おれ は

 あさって の あさ はやく、


 とり の うち を

 一軒いっけん ずつ まわって、

On the morning of the day after tomorrow I'm going to go to every house


 おまえ が た か どうか を

 いて あるく。

and ask if you've been by.


 一軒いっけん でも

  なかった という いえ が あったら、


 もう 貴様きさま も


 その とき が おしまい だぞ。」

貴様きさま = おまえ:you ■おしまい:end

If I find even one home that you haven't visited, that will be the end of you!"


「だって


 それ は

 あんまり 無理むり じゃ あり ません か。

"But there's no way I could do it!


 そんな こと を する くらい なら、


 わたし は もう

 んだ ほう が まし です。

■~ほう が まし:rather

I would rather die!


 いま すぐ

 ころして ください。」

Please, just kill me now!"


「まあ、よく、

 あと で かんがえて ごらん

■~ごらん:try

"Oh, come now, think it over.


 市蔵いちぞう なんて

 そんなに わるい  じゃ ない よ。」


Leonard is a pretty good name."


たか は

おおきな はね を 一杯いっぱい に ひろげて、


自分じぶん の  の ほう へ

んで かえってき ました。

:nest

The hawk spread out his wings and flew back towards his nest.


The nighthawk stood there with his eyes closed in thought. Why do they hate me so? Because my face looks like it's been splattered with miso, and because my beak is odd? ……

よたか は、

じっと  を つぶっ


かんがえ ました。

■つぶる:close

The nighthawk stood there with his eyes closed in thought.


一体いったい ぼく は、


 なぜ

 こう みんな に いやがられる の だろう。

■いやがる:hate

Why do they hate me so?


 ぼく の かお は、

 味噌みそ を つけた ようで、

Because my face looks like it's been splattered with miso,

 くち は けてる から か なあ。

けて る = けて いる:split

and because my beak is odd?


それだって、


ぼく は いままで、

なんにも わるい こと を した こと が ない

■した こと が ない:haven't done

Even so, I haven't done anything wrong!


 あかぼう の めじろ が

  から ちて いた とき は、


 たすけて

  へ れてって やった。

あかぼう:chick ■めじろ:Whiteeye

I remember that day when I helped the Whiteeye chick back to its nest after it fell out.


 そしたら

 めじろ は、


 あかぼう を


 まるで ぬすびと から でも とりかえす ように

 ぼくから ひきはなした んだ なあ。

■そしたら = そう したら ■ぬすびと:thief

Its mother snatched it from me as if rescuing her baby from a thief.


 それから


 ひどく

 ぼく を わらった っけ。


And then she just laughed so hard at me.


 それに


 ああ、

 今度こんど は


 市蔵いちぞう だ なんて、

And now I have to change my name to Leonard?


 くび へ ふだ を かける なんて、

Hang a sign about my neck?


 つらい はなし だ なあ。)

Oh, how terrible…


It was already getting dark. Nighthawk flew from his nest. The clouds glowed menacingly, and hung low in the sky. The nighthawk seemed to almost rub against them as he silently flew about.……

あたり は、


もう

うすぐらく なって い ました。

It was already getting dark.


たか は

 から し ました。

Nighthawk flew from his nest.


くも が

意地悪いじわる ひかって、


ひくく たれて い ます。

意地悪いじわるく:menacingly ■ひくく たれる:hang low

The clouds glowed menacingly, and hung low in the sky.


たか は

まるで くも と すれすれに なって、

■すれすれ:right on the surface of …

おと なく

そろ を びまわり ました。

The nighthawk seemed to almost rub against them as he silently flew about.


それから にわかに


よたか は

くち を おおきく ひらいて、

■にわかに:suddenly

Nighthawk suddenly opened his mouth wide,


はね を まっすぐに ひろて、


まるで  の ように

そら を よこぎり ました。

ひろげる:spread ■:arrow

held his wings out straight,
and cut across the sky like an arrow.


ちいさな 羽虫はむし が


幾匹いくひき 幾匹いくひき

その のど に はいり ました。

幾匹いくひき も:many

He trapped countless small insects in his mouth.


からだ が

つち に つく か つか ない うち に、

■つく:touch

よたか は


ひらり と また

そら へ はねあがり ました。

Almost as soon as he touched ground he lit off again.


もう

くも は 鼠色ねずみいろ に なり、

鼠色ねずみいろ:gray

The clouds had turned gray,


むこう の やま には


山焼やまやけ の  が

まっ です。

and the setting sun colored the faraway mountaintops with crimson fire.


たか が

おもって ぶ とき は、


そら が まるで ふたつ に れた ように

おもわれ ます。

Nighthawk flew so forcefully that he seemed to slice the sky into two.


一匹いっぴき の 甲虫かぶとむし が、


たか の のど に はいって、

ひどく もがき ました。

甲虫かぶとむし ■のど:throat ■もがく:squirm

A beetle flew into his mouth and squirmed about.


よたか は


すぐ それ を

みこみ ました が、

みこむ:swallow

The nighthawk swallowed it down,


そのとき


なんだか

せなか が ぞっと した ように


おもい ました。

なんだか:for some reason ■せなか:back

but for some reason doing so sent a chill down his back.


くも は

もう まっくろく、

The clouds were now pitch black,


ひがし の ほう だけ

やまやけ の  が あかく うつって、


おそろしい ようです。

and only the mountains to the East cast the frightening reflection of the red setting sun.


よたか は


むね が つかえた ように

おもい ながら、

■むね:chest

Feeling an ache in his chest,


また

そら へ のぼり ました。

Nighthawk again took off into the sky.


また

一匹いっぴき の 甲虫かぶとむし が、


たか の のど に、

はいり ました。

Again a beetle flew into his mouth,


そして


まるで よたか の のど を ひっかい

ばたばた し ました。

■ひっかく:scratch

and there it squirmed, scratching his throat.


よたか は


それ を

無理むり のみこんで しまい ました が、

無理むりに:force oneself to …

After great effort Nighthawk managed to swallow the beetle,


そのとき

きゅうに むね が どきっと して、

むね:heart

but doing so caused his heart to leap,


たか は


大声おおごえ を あげて

し ました。

大声おおごえ:loud voice ■く:cry

and he cried out in a loud voice.


き ながら


ぐるぐる ぐるぐる そら を

めぐった の です。

Crying, he flew around and around, making circles in the sky.


Oh, I kill so many beetles and insects every night. And now I'm to be killed by the hawk. So this is what it feels like. Oh, I can't stand this. I'll stop eating insects, and starve to death. No, Hawk will kill me before that happens. No, before that happens I'll fly far, far away.

(ああ、

 かぶとむし や、たくさん の 羽虫はむし が、


 毎晩まいばん

 ぼく に ころされる。

Oh, I kill so many beetles and insects every night.


 そして

 その ただ ひとつ の ぼく が


 こんど は

 たか に ころされる。

And now I'm to be killed by the hawk.


 それ が

 こんなに つらい のだ。

■つらい:painful

So this is what it feels like.


 ああ、つらい、つらい。

Oh, I can't stand this.


 ぼく は


 もう むし を たべ ないで

 て のう。

える:starve

I'll stop eating insects, and starve to death.


 いや その まえ


 もう たか が

 ぼく を ころす だろう。

No, Hawk will kill me before that happens.


 いや、その まえに、


 ぼく は

 とお の とおく の そら の むこう に


 ってしまおう。)

とおく:far

No, before that happens I'll fly far, far away.


The red light from the sun spread like water, setting the clouds on fire. Nighthawk flew straight to the home of his brother, Kingfisher. When he got there Kingfisher had just awoken, and was looking at the burning mountains.……

山焼やまやけ の  は、


だんだん

みず の ように ながれて

ひろがり、

The red light from the sun spread like water,


くも も

あかく て いる よう です。

える:burn

setting the clouds on fire.


よたか は

まっすぐに、


おとうと の かわせみ の ところ へ

んでき ました。

Nighthawk flew straight to the home of his brother, Kingfisher.


きれいな かわせみ も、

丁度ちょうど きて

When he got there Kingfisher had just awoken,


とおく の 山火事やまかじ を

て いた ところ でした。

山火事やまかじ:mountain fire

and was looking at the burning mountains.


そして


よたか の りてた の を 

い ました。

Seeing Nighthawk land, he spoke:


にいさん。今晩こんばんは。

"Well hello, brother.

 なにか きゅう よう です か。」

きゅうの:urgent ■よう:something to do

To what do I owe the pleasure?"


「いいや、

"Nothing.

 ぼく は

 今度こんど とおい ところ へ く から ね、


 その まえ

 ちょっと おまえ に  に た よ。」

う:see, meet

I just came to say goodbye. I'm leaving for a place far, far away."


にいさん。

"Brother!


 っちゃ いけません よ。

っちゃ = って は

You can't leave!


 蜂雀はちすずめ も

 あんな とおく に いる ん です し、


 ぼく

 ひとりぼっち に なってしまう じゃ ありません か。」

■ひとりぼっち:alone

With Hummingbird so far away now, I'll be left all alone!"


「それ は ね。

 どうも 仕方しかた ない のだ。

"I'm sorry, it can't be helped.


 もう

 今日きょう は


 なにも わ ないで くれ。

Please, speak no further on this today.


 そして

 おまえ も ね、


 どうしても とら なければならない とき の ほか は


 いたずらに

 おさかな を ったり し ない ように して くれ。

■いたずらに:thoughtlessly

And please, try not to kill any more fish than is absolutely necessary.


 ね、さよなら。」

Good bye, now."


にいさん。

"Brother,


 どうした ん です。

what's wrong with you?


 ねえ

 もう ちょっと って ください。」

Please, stay a little longer."


「いや、

 いつまで いても おんなじ だ。

■おんなじ = おなじ:same

"No, staying any longer won't change things.


 はちすずめ へ、


 あとで

 よろしく って やって くれ。

Please give my regards to Hummingbird.


 さよなら。

Goodbye.


 もう

 あわ ない よ。

I'm afraid we'll never meet again.


 さよなら。」

Goodbye."


Nighthawk returned to his home in tears. The short summer night was already coming to an end. ……Nighthawk gave a high twitter. He then thoroughly straightened up his nest, preened his feathers, and flew from his nest again.……

よたか は

き ながら


自分じぶん の おうち へ

かえって ました。

Nighthawk returned to his home in tears.


みじかい なつ の よる は

もう あけ かかって い ました。

よるける:dawn

The short summer night was already coming to an end.


シダ の  は、

よあけ の きり を って、


あおく つめたく

ゆれ ました。

■シダ:fern ■きり:mist

The fern leaves absorbed the mist as they waved blue and cold.


よたか は


たかく きしきしきし と

き ました。

Nighthawk gave a high twitter.


そして

 の なか を きちんと かたづけ、

He then thoroughly straightened up his nest,


きれいに からだじゅう の はね や  を そろえて、

preened his feathers,


また

 から し ました。

and flew from his nest again.


きり が はれて、

The mist had cleared,


さま が

丁度ちょうど ひがし から のぼり ました。

■おさま(太陽たいよう):sun

and the sun had just risen in the East.


たか は

ぐらぐら する ほど まぶしい の を こらえて、

■ぐらぐら する:feel dizzy ■まぶしい:dazzling ■こらえる:endure

Ignoring the dizzying brightness,


 の ように、


そっち へ

んでき ました。

Nighthawk flew like an arrow in that direction.


「おさん、おさん。

"Mr. Sun, Mr. Sun!


 どうぞ わたし を あなた の ところ へ

 れてって ください。

れてって = れてって:bring me to …

Please bring me to you!


 けて んでも

 かまいません

■かまい ません:don't care

I don't care that I'll burn and die.


 わたし の ような みにくい からだ でも


 ける とき には


 ちいさな ひかり を

 す でしょう。

■みにくい:ugly

Even an ugly body like mine will shine as it burns!


 どうか わたし を れてって ください。」

Please, take me!"


っても っても、

But no matter how far he flew,


さま は

ちかく なり ません でした。

he didn't get any closer to the sun.


かえって

だんだん ちいさく とおく なり ながら

■かえって:on the contrary

さま が

い ました。

The sun seemed to get smaller and farther, even, and said


「おまえ は よたか だな。

"Nighthawk, isn't it?


 なるほど、

 ずいぶん つらかろう

■つらかろう = つらい だろう

Yes, yes, I know your pain.


 今度こんど そら を んで、


 ほし に

 そう たのんで ごらん。

ほし:star ■たのむ:ask

But you should try talking to the stars.


 おまえ は

 ひる の とり では ない の だから な。」

■ひる:day

You're not a day bird, you know."


たか は


おじぎ を ひとつ した

と おもい ました が、

■おじぎ:bow

Nighthawk tried to give a bow,


きゅうに ぐらぐら して

but suddenly became dizzy


とうとう


野原のはら の くさ の うえ に

ちて しまい ました。

野原のはら:fields

and fell back down into the fields.


そして

まるで ゆめ を て いる よう でした。

ゆめ を る:dream

He felt as if he were having a dream.


からだ が


ずうっと あか や  の ほし の あいだ を

のぼって ったり、

He saw his body climbing up to between the red and yellow stars,


どこまでも

かぜ に ばされたり、

he saw himself blown endlessly by the wind,


また たか が 

からだ を つかんだり した ようでした。

he saw himself trapped in Hawk's talons.


He opened his eyes. The dew from the pampas grass had dripped on him. It was already night, and the sky was blue-black and filled with blinking stars. Nighthawk flew back up into the sky.……

つめたい もの が


にわかに

かおに ち ました。

■にわかに:suddenly

Something cold plopped on his face.


よたか は

 を ひらき ました。

He opened his eyes.


一本いっぽん の わかい すすき の  から


つゆ が

したたった の でした。

■すすき:pampas ■つゆ:dew ■したたる:drip

The dew from the pampas grass had dripped on him.


もう

すっかり よる に なって、

It was already night,


そら は あおぐろく、

and the sky was blue-black


一面いちめん の ほし が

またたいて い ました。

■またたく:blink

and filled with blinking stars.


よたか は

そら へ びあがり ました。

Nighthawk flew back up into the sky.


今夜こんや も


やまやけ の  は

まっか です。

The mountains were again red with the setting sun.


よたか は

その  の かすかな  と、


つめたい ほしあかり の なか を

とび めぐり ました。

り:glow

Nighthawk flew about in that faint glow and among the cold light of the stars.


それから

もう いっぺん び めぐり ました。

Then he flew off again.


そして

おもって


西にし の そら の あの うつくしい オリオンのほし の ほう に、

まっすぐに び ながら


さけび ました。

■オリオン の ほし = オリオン:Orion

He headed west, straight towards the beautiful constellation of Orion, shouting


「おほし さん。

"Oh, star!


 西にし の あおじろい おほし さん。

Blue-white star of the West!


 どうか わたし を


 あなた の ところ へ

 れてって ください。

Please take me to you!


 けて んでも かまい ません。」

I don't care that I will be burned to death!"


オリオン は

いさましい うた を つづけ ながら

いさましい:heroic

But Orion just continued singing his heroic song,


よたか など は

てんで 相手あいて に し ません でした。

■てんで ~ない:not … least … ■相手あいて に する:pay attention

and didn't pay Nighthawk the least bit of attention.


よたか は

きそう に なって、

The Nighthawk almost began to cry,


よろよろ と ちて、

and spiraled back to the ground.


それから

やっと ふみとまって、


もう いっぺん とび めぐり ました。

He finally landed and took off again, circling once.


それから、

みなみ の 大犬座おおいぬざ の ほう へ


まっすぐに び ながら

さけび ました。

大犬座おおいぬざ:Canis Major

Then he flew straight towards Canis Major in the south, shouting,


「おほし さん。

"Oh, Star!


 みなみ の あおい おほし さん。

Blue star of the South!


 どうか

 わたし を あなた の ところ へ

 つれてってください。

Please take me to you!


 やけて んでも かまい ません。」

I don't care that I will be burned to death!"


大犬おおいぬ は

あお や むらさき や  や


うつくしく せわしく またたき ながら

い ました。

The Great Dog blinked blue and purple and yellow and said,


馬鹿ばか を う な。

馬鹿ばか:foolishness

"Silence with such foolishness.


 おまえ なんか 一体いったい どんな もの だい

■~だい = ~だ?

Who do you think you are?


 たかが とり じゃ ないか。

■たかが:just

You're just a bird.


 おまえ の はね で

 ここまで る には、


 億年おくねん 兆年ちょうねん 億兆年おくちょうねん だ。」

It would take you millions, billions, trillions of years to fly this far with those wings of yours!"


そして

また べつ の ほう を き ました。

and with that, he turned away.


よたか は


がっかり して、

よろよろ ちて、

Disappointed again, Nighthawk spiraled back to the Earth.


それから

また へん び めぐり ました。

He then flew back up and circled twice.


それから


また おもって

きた の 大熊星おおくまぼし の ほう へ


まっすぐに び ながら

さけび ました。

大熊星おおくまぼし = 大熊座おおくまざ:Ursa Major

This time he flew north towards Ursa Major, shouting


きた の あおい おほし さま、

"Blue star of the North!


 あなた の ところ へ

 どうか わたし を れてってください。」

Please take me to you!"


大熊星おおくまぼし は

しずかに い ました。

The Great Bear answered,


余計よけいな こと を

 かんがえる もの では ない

■~ する もの では ない = ~ する な:Don't …

"Don't waste your time with such silliness.


 すこ

 あたま を ひやして  なさい。

You should go cool your head.


 そうう とき は、


 氷山ひょうざん の いて いる

 うみ の なか へ  か、

氷山ひょうざん:iceberg ■む:jump into

Jumping into an iceberg-filled ocean might help,


 ちかく に うみ が なかったら、


 こおり を うかべた コップ の みず の なか へ

 む の が


 一番いちばん だ。」

一番いちばん:best

or if there is no ocean near you, try diving into a cup filled with ice water."


よたか は

がっかり して、

Disappointed again,


よろよろ ちて、

Nighthawk spiraled back to the Earth,


それから また、よんへん そら を めぐり ました。

and then flew back up and circled four times.


そして

もう 一度いちど


ひがし から いま のぼった

あまがわ の むこう ぎし の わしほし に


さけび ました。

あまがわ:the Milky Way ■わしほし = わし:the eagle Aquila

He then flew east again, towards the eagle Aquila on the far bank of the just-risen the Milky Way, shouting,


ひがし の しろい おほし さま、

"White star of the East!


 どうか

 わたし を あなた の ところ へ


 れてってください。

Please take me to you!


 やけて んでも かまい ません。」

I don't care that I will be burned to death!"


わし は

横柄おうへい い ました。

横柄おうへいに:proudly

The Eagle proudly stated,


「いいや、

 とても とても、はなし にも なんにも ならん

はなし に なら ない:that will never happen

"No, no, that will never happen.


ほし に なる には、

それ 相応そうおう の 身分みぶん で なくちゃいかん

相応そうおう:certain level ■なくちゃいかん = なければならない:should, must

You need a certain level of birth to become a star.


 また よほど かね も いる のだ。」

■いる = る:need

That and a lot of money."


Nighthawk lost all hope, and closing his wings began to fall to the ground. When his weak legs were just a yard from the ground he suddenly twisted back up into the heavens like a whirlwind. ……

よたか は

もう すっかり ちから を おとして しまって、

Nighthawk lost all hope,


はね を じて、

 に ちてき ました。

and closing his wings began to fall to the ground.


そして


もう すこし で

地面じめん に その よわいい あし が つく という とき、

When his weak legs were just a yard from the ground


よたか は

にわかに


のろし の ように そら へ とびあがり ました。

■のろし:a signal fire

he suddenly twisted back up into the heavens like a whirlwind.


そら の なか ほど へ て、

Upon reaching the high heavens


よたか は


まるで わし が

くま を おそう とき する ように、


ぶるっと からだ を ゆすって

くま:bear

he spun around like an eagle attacking a bear


 を さかだて ました。

and stood his feathers on end.


それから


キシキシキシキシキシッ と

たかく たかく さけび ました。

He let out a high, high screech.


その こえ は

まるで たか でした。

His voice was like a hawk's.


野原のはら や はやし に ねむって いた

ほか の とり は、


みんな  を さまして、

The other birds asleep in the fields and the forest all woke up


ぶるぶる ふるえ ながら、

いぶかしそうに ほしぞら を あげ ました。

■いぶかしそうに:curiously

and, shaking, looked curiously up into the starry sky.


Nighthawk continued on higher and higher, straight up into the sky. The sun on the mountains looked like the glowing end of a cigarette. Nighthawk climbed and climbed.……

たか は、

どこまでも、どこまでも、


まっすぐに そら へ

のぼってき ました。

Nighthawk continued on higher and higher, straight up into the sky.


もう 山焼やまやけ の  は

たばこ の 吸殻すいがら くらい に しか え ません。

■たばこ の 吸殻すいがら:a cigarette end

The sun on the mountains looked like the glowing end of a cigarette.


よたか は

のぼって のぼって き ました。

Nighthawk climbed and climbed.


さむさ で


いき は

むね に しろく こおり ました。

The cold froze his breath upon his breast.


空気くうき が うすく なった ため に、


はね を

それ  それ は せわしく

うごかさ なければなりません でした。

■それ は それ は = とても:very

The air became thinner, causing him to beat his wings faster and faster.


それなのに、


ほし の おおきさ は、

さっき と すこしも かわり ません。

Nonetheless, the stars grew no larger.


つく いき は

ふいご の よう です。

■いき を つく = いき を する:breathe ■ふいご:bellows

His chest pumped like a bellows.


さむさ や しも が


まるで つるぎ の ように

よたか を し ました。

The cold and frost pierced him like a sword.


よたか は


はね が

すっかり しびれて しまい ました。

■しびれる:numb

His wings grew numb.


そして

なみだぐんだ  を あげて


もう いっぺん そら を  ました。

■なみだぐんだ:tear-filled

He opened tear-filled eyes and once again looked up at the heavens.


And yes, that was the end of him.……

そう です。

And yes,


これ が

よたか の 最後さいご でした。

that was the end of him.


もう よたか は


ちて いる のか、

のぼって いる のか、


さかさ に なって いる のか、

うえ を いて いる の かも、


わかり ません でした。

He no longer knew if he was falling or climbing, upside down or right side up, or if he was still looking up.


ただ

こころもち は やすらかに、

■こころもち(心持こころもち) = 気持きもち:feeling ■やすらか:peaceful

But peace filled his heart,


その  の ついた おおきな くちばし は、

よこ に まがって は い ました が、

and though his bloody beak was slightly bent to one side,


たしかに

すこし わらって い ました。

there was a slight smile on it.


それから しばらく たって


よたか は

はっきり  を ひらき ました。

After a time Nighthawk opened his eyes wide.


そして


自分じぶん の からだ が いま

りん の  の ような


あおい うつうくしい ひか に なって、

しずかに えて いる の を


 ました。

りん:phosphorous

He saw that his body had become a beautiful light, blue like a phosphorous flame, burning silently.


すぐ となり は、

カシオペア でした。

Just next to him was Cassiopeia.


あまがわ の あおじろい ひかり が、

すぐ うしろ に なって い ました。

From just behind him shined the blue-white light of the Milky Way.


And Nighthawk's Star burned on. It burned on and forever on. It continues to burn, even now.

そして


よたか の ほし は

え つづけ ました。

And Nighthawk's Star burned on.


いつまでも いつまでも

え つづけ ました。

It burned on and forever on.


いまでも まだ

えて い ます。

It continues to burn, even now.






Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.