2021年1月23日土曜日

JLPT N4: Japanese Short Stories: Ryunosuke Akutagawa: 仙女(fairy)

JLPT N4: Japanese Short Stories



仙女せんにょ(Fairy)

芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ



むかし、ある田舎いなか

わか男性だんせいが、一人ひとりんでいました。



かれ

いえなか

ほんばかりんでいました。



かれいえとなり

わかおんな一人ひとり

んでいました。



とても、うつくしいおんなでした。



かれ

いつも、

このわかおんなのことを、

りたいとおもっていました。



彼女かのじょが、どこからたのか、

なにをして、生活せいかつしているのか

だれも、らなかったのです。



あるかぜのない、はる夕方ゆうがたでした。



かれ

そとてみると、

このわかおんなが、おおきなこえで、

なにか、っているのが、

こえました。



かれ

どうしたのだろう、とおもいながら、

彼女かのじょいえまえってみました。



すると、

彼女かのじょは、とてもおこって、

一人ひとりの、おじいさんのあたま

たたいているのです。

たたく:to hit)



しかも、

おじいさんは、そのわかおんな

あやまっているのです!



それでも

彼女かのじょは、

おじいさんのしろかみあたま

たたいていました。



かれは、いました。



「これは、どうしたのです?



 こんな、おじいさんをたたかなくても

 いいじゃありませんか!」



かれ

彼女かのじょが、おじいさんをたたくのを

めようとしました。



自分じぶんよりとしをとったひとたたくのは

 くないことですよ」



わかおんないました。



わたしよりとしをとったひとを?

 このおとこは、わたしよりも、わかいのですよ」



「このおじいさんが、あなたより、わかい?」



「ええ、そうです。

 わたしは、このおとこ母親ははおや(mother)ですから」



かれおどろいて

彼女かのじょかおました。



彼女かのじょは、やっと

たたくのをめました。



とてもわかくて、うつくしい彼女かのじょは、

かれをまっすぐにて、

こういました。



「この息子むすこは、

 わたしうことをきません。



 息子むすこは、

 わたしうことをかないで、

 自分じぶんきなことばかり、していました。



 だから、

 としをとってしまったのです」



「でも、……

 このおじいさんは、もう七十ななじゅうくらいでしょう。



 そのおじいさんの母親ははおやだという、あなたは、

 いくつなのですか?」



わたしですか?

 わたしは、三千さんぜん六百ろっぴゃくさいです」



かれ

この言葉ことばいて、

このうつくしいとなりおんな

仙女せんにょ(fairy)だったことを

りました。



しかし、

その言葉ことば一緒いっしょ

そのうつくしい彼女かのじょ

どこかへ、えてしまったのです。



はるの、あかるいひかりなかに、

おじいさんは、一人ひとりっていました。






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