2021年2月7日日曜日

JLPT N3: Japanese Short Stories: Soseki Natsume: Ten Nights of Dreams: The Third Night



夏目なつめ漱石そうせき(Soseki Natsume)の

夢十夜ゆめじゅうや(Ten Nights of Dreams・第三夜だいさんや(The Third Night)』を







第三夜だいさんや』(The Third Night)をんでみましょう。



第一夜だいいちや』は、とてもうつくしいはなしでした。



第三夜だいさんや』は、こわはなしです。



 こんなゆめた。



 六歳ろくさい子供こども

 背負せおっている。

 (背負せおう:to carry … on my back)



 わたし子供こどもである。



 ただ、不思議ふしぎこと

 らないあいだ

 子供こどもは、えなくなっていた。



 わたし

 おまえは、いつ、えなくなったのか

 とたずねると

 むかしからだ、とこたえた。



 こえ子供こどもこえだったが、

 はなかた(diction)は、大人おとなである。



わたし」は、子供こども背負せおって

よるみちあるいています。



まわりに、ひとはいません。



わたし」と、その子供こども二人ふたりだけです。



まわりに、いえなにもありません。



んぼ(paddy-fields)のなかです。



そして、

子供こどもえないのです。



 左右さゆうあおんぼである。



 みちほそい。



 くらなか

 とり姿すがた

 時々ときどきえる。



 「んぼにはいったね」と

 背中せなか子供こどもった。



 「どうして、わかる」

 と、わたしたずねると

 「だって、とりくから」

 とこたえた。



 するととり

 本当ほんとう二度にどほどいた。



 ***



 わたし

 自分じぶん子供こどもなのに

 すここわくなった。



 こんなものを背負せおっていては

 これから、なにきるか、わからない。



 どこかにてるところはないだろうかと

 こうをると

 くらなかおおきなもりえた。



 あそこにてようとおもった途端とたんに、

 背中せなか子供こども

 「ふふん」とった。



 「なにが、おかしい?」

 とたずねたが、

 子供こども返事へんじをしなかった。



 ただ

 「おとうさん、おもいか?」

 とった。



 「おもくない」

 とこたえると

 「すぐにおもくなるよ」

 とった。



わたし」は、

よる子供こども背負せおって

だれもいない、んぼのなか

あるいています。



そして、その子供こども

てようとしているのです。



子供こどもてるために

もりかって、あるいているのです。



しかし、

なかなか、もりきません。



わたし」が

あるきながら、こまっていると

背中せなか子供こどもが、

います。



 わたしは、

 なんだかいやになった。



 はやもりって

 ててしまおう

 とおもっていそいだ。



 「もうすこくと、わかる。

  ――ちょうど、こんなばんだった」

 と背中せなか子供こどもっている。



 「なにが?」

 とおおきなこえ

 たずねた。



 「なにが?

  それはっているだろう」

 と子供こどもこたえた。



 すると

 わたしなにっているように

 おもった。



 けれども

 はっきりとは、わからない。



 ただ、こんなばんだったように

 おもった。



 そして

 もうすこけば、わかるように

 おもった。



 わかると、大変たいへん

 ともおもった。



 大変たいへんだから、

 わからないうちに

 はやてようとおもった。



 てて安心あんしんしなければならない

 とおもった。



 わたしは、もりいそいだ。



これは、不思議ふしぎ会話かいわです。



わたし」は、

いまから、子供こどもてようとしています。



しかし、

子供こどもは、

自分じぶんむかしてられたのだ」

っています。



わたし」にとって未来みらいのことが、

子供こどもにとっては過去かこのことなのです。



そして、

わたし」も

自分じぶん過去かこおもそうとします。



しかし、

おもすことができません。



おもすのがこわいのです。



やがて、

わたし」は、もりなかはいります。



そして

一本いっぽんすぎ(cedar)のまえ

ます。



そこで、

子供こどもいます。





 「ここだ、ここだ。

  ちょうど、そのすぎ(cedar)ののところだ」



 あめなか

 子供こどもこえ

 はっきりこえた。



 わたしおもわず

 あるくのをめた。



 わたしは、もう

 もりなかにいた。



 すこさきにあるくろいものは

 たしかに、子供こどもとお

 すぎだった。



 「おとうさん、

  そのすぎのところだったね」



 「うん、そうだ」

 とおもわずこたえてしまった。



 ***



 「百年前ひゃくねんまえだね」

 と子供こどもった。



 なるほど

 百年前ひゃくねんまえだとおもった。



 「おまえが、わたしころしたのは

  いまから、ちょうど百年前ひゃくねんまえだね」

 と子供こどもった。



 この言葉ことばくと、

 すぐに、おもした。……



 いまから百年前ひゃくねんまえ

 こんなくらよるに、

 このすぎで、

 一人ひとりの、えない子供こども

 ころした。



 わたしは、ひところした。



 そうおもうと、突然とつぜん

 背中せなか子供こども

 地蔵じぞう(a god of stone)のようにおもくなった。








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