
Reading Japanese Literature in Japanese
This series is for the people/students who want to learn Japanese.
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2021年2月8日月曜日
JLPT N3: Soseki Natsume: I am a Cat: あらすじ(outline)
JLPT N3
■夏目漱石(1867-1916)
Soseki Natsume
吾輩は猫である
I am a Cat
登場人物(characters)
■吾輩
猫、オス(male)
『吾輩』とは、『私』という意味。
名前はない
■主人(master)
吾輩が住んでいる家の主人
学校の先生
胃が悪い
■迷亭先生
主人の友人
人に嘘を言うのが好き
■寒月君
主人の友人
■東風君
主人の友人
■三毛子
琴(Japanese harp)の師匠(master)のところに
住んでいる三毛猫(tortoiseshell cat)
メス(female)
吾輩が好きな猫
■黒
黒い猫
あらすじ(outline)
■吾輩は猫である(1)
吾輩(私)は、猫である。
吾輩は、ある人間の家に住むようになる。
主人は、学校の先生である。
主人は、絵を描くこともある。
下手である。
黒(黒い猫)と話をするようになった。
黒は、自慢が好きである。
■吾輩は猫である(2)
吾輩は、猫である。
名前は、まだ、ない。
新しい年になった。
吾輩は、
主人の食べ残した餅(rice cake)を
食べようとする。
吾輩は、何でも食べるが、
餅を食べるのは、初めてである。
餅を食べるのは、難しい!
■吾輩は猫である(3)
吾輩は、猫である。
名前は、まだ、ない。
正月(New Year)である。
前回、吾輩は、
餅を食べようとして、大変なことになった。
今回は、
主人のところへ来た客の、
面白い話である。
東風君が、
「トチメンボー」という、意味のわからない食べ物を
食べようとする話。
また、東風君は、
不思議な朗読会(reading group)の話もする。
主人に、
たくさん食べても、胃が悪くならない方法についての
手紙が来る。
最後に、主人が、
「引力(gravitation)」についての奇妙な詩(?)を作る。
■吾輩は猫である(4)
吾輩は、猫である。
名前は、まだ、ない。
新しい年になって、十日ほどすぎた。
主人の家に、
迷亭先生と、寒月君が来ている。
三人は、それぞれ、
自分の奇妙な経験(?)の話をする。
首をつりたくなる松の話。
(つる:to hang)
川の中から、
女の声が聞こえる話。
妻と出かけようとすると
突然、病気になる話。
最後に、吾輩は、
病気の三毛子に会いに行く。
しかし、なぜか、家は、とても静かだった。
■吾輩は猫である(5)
主人がいない間に、
奥さんが、迷亭先生と
主人について、話をする。
たくさん本を買う話。
月並(普通の人間)とは
何かという話。
主人が帰ってくると、
寒月君も来て、
奇妙な演説の練習をする。
最後に、
東風君が
外国人と話をして
意味がわからなくて、苦労する話。
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JLPT N3: Mystery Stories: あらすじ(outline)
JLPT N3
Mystery Stories
あらすじ(outline)
■江戸川乱歩(1894-1965)
Rampo Edogawa
人間椅子(1925)
The Human Chair
ふたご (1924)
(双生児)
ある死刑囚の告白
The Twins
Confession of Murder
日記帳(1925)
The Diary
赤い部屋(1925)
The Red Chamber
■人間椅子
The Human Chair
(江戸川乱歩 Rampo Edogawa)
男は、
自分が作った椅子の中に入る。
椅子の中で、生活する。
そして、椅子に座る女に恋をする。
■ふたご
ある死刑囚の告白
The Twins
Confession of Murder
(江戸川乱歩 Rampo Edogawa)
男は、人を殺して、
死刑(death penalty)になった。
しかし、男は、
もう一人、殺したと言う。
そして、それは、
ふたごの兄だと言う。
■日記帳
The Diary
(江戸川乱歩 Rampo Edogawa)
兄は、
死んだ弟の日記(diary)を読む。
弟が、恋をしていたことを知る。
しかし、弟が彼女に送ったのは、
普通の手紙ではなかった。
兄は、その秘密を知ることになる。
■赤い部屋
The Red Chamber
(江戸川乱歩 Rampo Edogawa)
一人の男が言った。
彼の「遊び」は、人を殺すことだと。
そして、今までに、
九十九人、殺したと。
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JLPT N3: Japanese Short Stories: あらすじ(outline)
Japanese Short Stories
あらすじ(outline)
■太宰治(1909-1948) Osamu Dazai
走れメロス(1940)
Run, Melos, Run
海(1946)
The Sea
■夏目漱石(1867-1916)
Soseki Natsume
夢十夜(1908)
Ten Nights of Dreams
第一夜(The First Night)から第五夜(The Fifth Night)
文鳥(1908)
(Java Sparrow)
■宮沢賢治(1896-1933)
Kenji Miyazawa
よたかの星(1934)
The Nighthawk Star
注文の多い料理店(1924)
The Restaurant of Many Orders
どんぐりと山猫(1924)
The Acorns and the Wildcat
あらすじ(outline)
■走れメロス(Run, Melos, Run)
太宰治(Osamu Dazai)
メロスは、悪い王を殺そうとする。
しかし、メロスが、殺されることになる。
メロスは、三日待ってくれ、と頼む。
そして、親友を、
自分の代わりに、
王のところに置いて行く。
しかし、メロスは、
王のところへ帰れなくなる。
帰らないと、親友は、死ぬことになる。
■海(The Sea)
太宰治(Osamu Dazai)
戦争中、
父は、子供に、海を見せようとする。
父は、子供が、喜ぶだろう、と思った。
しかし、
海を見た子供が言った言葉に
父は、驚く。
■夢十夜(Ten Nights of Dreams)第一夜(The First Night)
夏目漱石(Soseki Natsume)
女は、男に
百年、待っていて欲しい、と言う。
そして女は死んだ。
男は、女を待っている。
しかし、女は来ない。
■夢十夜(Ten Nights of Dreams)第二夜(The Second Night)
夏目漱石(Soseki Natsume)
男は、悟ろうと思った。
(悟る:to attain enlightenment)
悟れないのなら、死のう、と思った。
しかし、悟れない。
悟れないまま、死ぬ時間が来た。
■夢十夜(Ten Nights of Dreams)第三夜(The Third Night)
夏目漱石(Soseki Natsume)
男は、
目の見えない子供を
捨てよう、と思う。
子供も、そのことを知っている。
男は、
百年前に自分がやったことを
思い出す。
■夢十夜(Ten Nights of Dreams)第四夜(The Fourth Night)
夏目漱石(Soseki Natsume)
男は、まっすぐに歩いて行く。
そして、川へ入って行く。
深く、入って行く。
それでも、男は、
まっすぐに歩いて行く。
■夢十夜(Ten Nights of Dreams)第五夜(The Fifth Night)
夏目漱石(Soseki Natsume)
私は、
死ぬ前に、女に会いたい、と言う。
私は、女を待っている。
しかし、女は来ない。
■文鳥(Java Sparrow)
夏目漱石(Soseki Natsume)
私は、広い部屋で、
一日中、小説を書いている。
「文鳥(Java Sparrow)」を飼うことにした。
最初は、世話をしていた。
文鳥を見ながら、
昔、好きだった女性を
思い出した。
しかし、
段々、忙しくなり
世話をしなくなる。
■よたかの星(The Nighthawk Star)
宮沢賢治(Kenji Miyazawa)
よたか(Nighthawk)は、
みんなに、嫌われていました。
たか(Hawk)に、
名前を変えろ、と言われます。
よたかは、
遠くへ行こうとします。
そして、
夜の空を
高く高く、飛んで行きます。
■注文の多い料理店(The Restaurant of Many Orders)
宮沢賢治(Kenji Miyazawa)
二人の男が
山の中で、
帰る道がわからなくなる。
ところが、
そんな山の中なのに、
立派なレストランがあった。
二人は、
何か食べようと思って、
そのレストランに入る。
しかし、この不思議なレストランは、
たくさん戸があるだけで、
二人は、いつまでも、
食事ができない。
■どんぐりと山猫(The Acorns and the Wildcat)
宮沢賢治(Kenji Miyazawa)
ある日、一郎のところへ、
山猫(wildcat)から、葉書が来る。
山へ行ってみると
山猫が裁判をやっていた。
どんぐり(acorn)の裁判だった。
誰が、一番、偉い(great)どんぐりか、
という裁判だった。
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JLPT N3 N2: Japanese Short Stories: Osamu Dazai: No Longer Human
『人間失格』(No Longer Human)を読む
太宰治(1909-1948)の
『人間失格』(No Longer Human)を読んでみましょう。
これは、「葉蔵」という
一人の男の人生を
描いています。
子供の頃、学生時代、
女性との生活、
そして、
最後には病気になります。
話は、
この「葉蔵」の三枚の写真から
始まります。
少し読んでみましょう。
その子供の笑顔は
見れば見るほど
何とも言えない気味の悪いものを
感じる。
(気味の悪い:weird)
そもそも、それは、笑顔ではない。
この子は
少しも笑ってはいないのだ。
なぜなら、
この子は
両方の手のこぶし(fist)を
固く握って
立っている。
人間は
こぶしを固く握りながら
笑うことはできない。
猿だ。
猿の笑顔だ。
ただ
顔に
醜いしわ(wrinkle)が
あるだけなのである。
見ている人の気分を悪くさせるような、
そんな奇妙な表情の写真であった。
見れば見るほど
何とも言えない気味の悪いものを
感じる。
(気味の悪い:weird)
そもそも、それは、笑顔ではない。
この子は
少しも笑ってはいないのだ。
なぜなら、
この子は
両方の手のこぶし(fist)を
固く握って
立っている。
人間は
こぶしを固く握りながら
笑うことはできない。
猿だ。
猿の笑顔だ。
ただ
顔に
醜いしわ(wrinkle)が
あるだけなのである。
見ている人の気分を悪くさせるような、
そんな奇妙な表情の写真であった。
子供の頃の写真です。
奇妙な笑顔。
彼は、
笑いたくないのに、
笑っているのです。
彼は、一生、
「人間が理解できない」ことで
苦しみます。
まわりの人が何を考えているのか、
わからないのです。
だから、
彼は、
まわりの人を喜ばせようとします。
そのために、
楽しくもないのに、笑っているのです。
それが、「猿の笑顔」なのです。
別の写真についても読んでみましょう。
たとえば
私がこの写真を見て
目をとじる。
既に私は
この顔を忘れている。
その部屋に座っている男の顔は
思い出せない。
顔の印象は
すっと消えてしまい
どうしても、思い出せない。
絵にならない顔である。
漫画にもならない顔である。
目をひらく。
あ、こんな顔だったのか
と思い出す。
思い出しても
よろこびさえない。
まるで、
目をひらいて、その写真を再び見ても
思い出せない、
そんな顔である。
そうして
見ただけで、
イライラして、気分が悪くなるような顔である。
「死んだ人間の顔」でも
もっと何か
表情や印象がある。
私がこの写真を見て
目をとじる。
既に私は
この顔を忘れている。
その部屋に座っている男の顔は
思い出せない。
顔の印象は
すっと消えてしまい
どうしても、思い出せない。
絵にならない顔である。
漫画にもならない顔である。
目をひらく。
あ、こんな顔だったのか
と思い出す。
思い出しても
よろこびさえない。
まるで、
目をひらいて、その写真を再び見ても
思い出せない、
そんな顔である。
そうして
見ただけで、
イライラして、気分が悪くなるような顔である。
「死んだ人間の顔」でも
もっと何か
表情や印象がある。
これは、
彼が病気になって、
生活できなくなった後の写真です。
生きていても、
その顔の表情から
「生きている何か」を感じることができない
そんな写真なのです。
この物語は
そんな「葉蔵」の人生の話です。
ここまでを読んで、
暗い話だ
と思ったかもしれません。
あるいは、
この小説のあらすじ(outline)を読んで
そう思った人がいるかもしれません。
もちろん
明るい話ではないでしょう。
とても、苦しい話です。
それは、太宰治が感じていた
「苦しさ」でしょう。
そして、
それは、
現代の多くの人間が持っている
「苦しさ」でしょう。
多くの人が、人に言えないまま、
心の中に持っている「苦しさ」……
だから、
現代の多くの人が、
この小説を読むのだと思います。
そして、
そこに、「希望」を感じるのだと思います。
ここに書かれているのは
「絶望」(despair)ではないと思います。
この小説を読むと
「苦しくても生きるべきだ」
と、思ってしまうのです。
さて、
この葉蔵の苦しみの原因の一つは
父にあるのでしょう。
葉蔵が子供の頃、
父との間で起きたことを
読んでみましょう。
父は、
国会の議員(a member of the Diet)を
しています。
葉蔵や家族は、
青森に住んでいますが、
父は、ほとんど、東京にいます。
ある日、
父は、たくさんの子供を集めて
どんな(東京の)「おみやげ」が欲しいかと
尋ねます。
みんな、いろいなものを答えますが、
葉蔵だけは、
答えられません。
何が欲しい?
と聞かれると
とたんに
何も欲しくなくなるのでした。
どうでもいい
自分を楽しくさせるものなんかない
と思ってしまうのです
(どうでもいい:I don't care)
と、同時に
人から与えられるものは
どんなに自分の好みに合わなくても
それを断ることが出来ませんでした。
嫌なことを、嫌と言えないのです。
また、好きなことにも、
言いようのない恐怖を感じるのです。
そして、苦しむのでした。
つまり、自分には、
自分が欲しいものを選ぶ力がないのです。
これが
自分の「恥(shame)の多い人生」の
原因の一つだ
と思います。
***
自分が黙っているので、
父の機嫌が悪くなりました。
「やはり、本か?
浅草の仲店に
お正月の獅子舞いの獅子で
子供が遊ぶのにいい大きさのが
売っていたけど
欲しくないか?」
(正月:New Year)
(獅子舞い:a lion dance(獅子:lion))
欲しくないか?
と言われると
もう駄目なんです。
「本が、いいでしょう」
一番上の兄は
まじめな顔をして
言いました。
「そうか」
父は
がっかりした顔で
何も書こうともせずに
その手帳(notebook)を閉じてしまいました。
と聞かれると
とたんに
何も欲しくなくなるのでした。
どうでもいい
自分を楽しくさせるものなんかない
と思ってしまうのです
(どうでもいい:I don't care)
と、同時に
人から与えられるものは
どんなに自分の好みに合わなくても
それを断ることが出来ませんでした。
嫌なことを、嫌と言えないのです。
また、好きなことにも、
言いようのない恐怖を感じるのです。
そして、苦しむのでした。
つまり、自分には、
自分が欲しいものを選ぶ力がないのです。
これが
自分の「恥(shame)の多い人生」の
原因の一つだ
と思います。
***
自分が黙っているので、
父の機嫌が悪くなりました。
「やはり、本か?
浅草の仲店に
お正月の獅子舞いの獅子で
子供が遊ぶのにいい大きさのが
売っていたけど
欲しくないか?」
(正月:New Year)
(獅子舞い:a lion dance(獅子:lion))
欲しくないか?
と言われると
もう駄目なんです。
「本が、いいでしょう」
一番上の兄は
まじめな顔をして
言いました。
「そうか」
父は
がっかりした顔で
何も書こうともせずに
その手帳(notebook)を閉じてしまいました。
葉蔵は、
父の機嫌が悪くなったことが
恐ろしくなります。
父に何をされるか、わからない
と思います。
そう思うと
とても怖くなりました。
そこで、
彼は、父を喜ばせるために、
夜、
誰にも見つからないように
父の手帳(notebook)に、
「シシマイ(獅子舞い)」と書きます。
彼は、
「獅子舞い」など、欲しくなかったのです。
それでも、
彼は、父を喜ばせようとします。
そして、
それは、成功します。
東京から帰って来た父は
とても喜んでいます。
「仲店の、おもちゃ屋で
この手帳を開いたら
これ、ここに
シシマイ、と書いてある。
これは
私の字ではない。
何だろう、と思いました。
そして
わかりました。
これは
葉蔵のいたずらですよ。
あいつは
私が聞いた時には
黙っていたが
あとで
獅子が欲しくなったんだね。
何しろ
どうも
あれは
変わったやつですからね。
何も言わなかったのに、
ちゃんと書いている。
そんなに欲しかったのなら
そう言えばよいのに……。
私は
おもちゃ屋の前で笑いましたよ。
葉蔵をここへ呼びなさい」
この手帳を開いたら
これ、ここに
シシマイ、と書いてある。
これは
私の字ではない。
何だろう、と思いました。
そして
わかりました。
これは
葉蔵のいたずらですよ。
あいつは
私が聞いた時には
黙っていたが
あとで
獅子が欲しくなったんだね。
何しろ
どうも
あれは
変わったやつですからね。
何も言わなかったのに、
ちゃんと書いている。
そんなに欲しかったのなら
そう言えばよいのに……。
私は
おもちゃ屋の前で笑いましたよ。
葉蔵をここへ呼びなさい」
父は、
葉蔵の本当の気持ちを
理解していないのです。
そして、
葉蔵は、
このようなことを繰り返しながら、
他人を喜ばせるために、
自分に対して嘘をつく、
という生き方をするようになります。
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JLPT N3: Japanese Short Stories: Osamu Dazai: Run, Melos, Run
『走れメロス』を読む
太宰治(1909-1948)の
『走れメロス』(Run, Melos, Run)を読んでいきましょう。
これは、
1940年に書かれた
短い小説です。
太宰治の小説では、
この『走れメロス』と、『人間失格』(No Longer Human)が
最も有名です。
『走れメロス』は
小学校の教科書でも、使われており
日本人のほとんどが読んでいる小説です。
メロスは、とても怒った。
必ず、あの悪い王を殺さなければならない
と決心した。
必ず、あの悪い王を殺さなければならない
と決心した。
この話は、
メロスが、悪い王を殺そう
と思うところから、
始まります。
(メロス)
メロスは、
嘘が嫌いな
正直な男です。
メロスには、親が、いません。
妹と二人で生活しています。
街から遠い村で
羊(sheep)を育てて生活しています。
妹が結婚するので
そのために、食べ物や服を買おうとして
街に来ました。
しかし、
街が、とても静かなので
驚きました。
一人の老人が
その理由を
メロスに話します。
「王が、人を殺します」
「なぜ、殺すのだ?」
「人々が悪いことを考えているからだ、
と王は言います。
でも、誰も、
そんなことを考えていません」
「たくさんの人を殺したのか?」
「はい。
はじめは、王の妹の夫を。
それから、自分の子供を。
それから、妹を。
それから、妹の子供を。
それから、妻を」
「驚いた。
王は、気が狂ったのか?」
「いいえ。
気が狂ったのでは、ありません。
人を、信じることができないのです。
家来(vassal)も、信じることができないのです。
贅沢な生活をしている人には、
人質(hostage)を出すように、命令します。
命令に従わないと、殺されます。
今日は、六人殺されました」
それを聞いて、メロスは、とても怒りました。
「ひどい王だ。
殺さなければならない」
「なぜ、殺すのだ?」
「人々が悪いことを考えているからだ、
と王は言います。
でも、誰も、
そんなことを考えていません」
「たくさんの人を殺したのか?」
「はい。
はじめは、王の妹の夫を。
それから、自分の子供を。
それから、妹を。
それから、妹の子供を。
それから、妻を」
「驚いた。
王は、気が狂ったのか?」
「いいえ。
気が狂ったのでは、ありません。
人を、信じることができないのです。
家来(vassal)も、信じることができないのです。
贅沢な生活をしている人には、
人質(hostage)を出すように、命令します。
命令に従わないと、殺されます。
今日は、六人殺されました」
それを聞いて、メロスは、とても怒りました。
「ひどい王だ。
殺さなければならない」
このようにして
メロスは、
王を殺そうと思います。
メロスは、
とても単純な人間でした。
難しいことは
考えません。
王を殺そうとして、
城に行きます。
そして、
捕まります。
メロスは
王を殺そうとした罪で
殺されることになります。
その時、
メロスは、
妹のことを思い出します。
そこで、
王に
三日待ってくれと頼みます。
その間に、
村に帰って
妹を結婚させたい、と言います。
しかし、
王は信用しません。
「私は、もう
死ぬ覚悟ができている。
ただ、――」
と言って
メロスは、少し黙った。
そして、言った。
「殺すのを
三日待ってください。
たった一人の妹を
結婚させたいのです。
三日の間に、
私は、村で結婚式を行い
ここへ帰って来ます」
「馬鹿な!」
と王は
低い声で笑った。
「嘘だ。
逃げた小鳥は、帰って来ない」
「いいえ。
帰って来ます」
メロスは言った。
「私は約束を守ります。
私に三日だけください。
もし私を信じられないなら……
この街に
セリヌンティウスという親友が、います。
彼を、人質(hostage)として
ここに置いて行こう。
私が逃げて
三日目の日が暮れる前に
帰って来なかったら
彼を殺してください」
死ぬ覚悟ができている。
ただ、――」
と言って
メロスは、少し黙った。
そして、言った。
「殺すのを
三日待ってください。
たった一人の妹を
結婚させたいのです。
三日の間に、
私は、村で結婚式を行い
ここへ帰って来ます」
「馬鹿な!」
と王は
低い声で笑った。
「嘘だ。
逃げた小鳥は、帰って来ない」
「いいえ。
帰って来ます」
メロスは言った。
「私は約束を守ります。
私に三日だけください。
もし私を信じられないなら……
この街に
セリヌンティウスという親友が、います。
彼を、人質(hostage)として
ここに置いて行こう。
私が逃げて
三日目の日が暮れる前に
帰って来なかったら
彼を殺してください」
セリヌンティウスは
メロスの親友です。
今は、
街で石工(stone mason)の仕事を
しています。
メロスが
このように言っても
王は
メロスを信じません。
王は
次のように考えます。
それを聞いて、王は思った。
(この男は、きっと、帰って来ない。
だから、この男を行かせるのだ。
そして、三日目に、私は、悲しそうに言う。
だから、人を信用してはならないのだと。
そして、人質の男を殺す)
「願いを、聞いた。
その男を呼べ。
三日目、日が暮れる前に、帰って来い。
遅れたら、その男を殺す。
ちょっと遅れて来い!
お前の罪は永遠に許してやる」
「なに……
何を言う!」
「はは。
命が大事だったら、遅れて来い。
お前の考えは、わかっている」
(この男は、きっと、帰って来ない。
だから、この男を行かせるのだ。
そして、三日目に、私は、悲しそうに言う。
だから、人を信用してはならないのだと。
そして、人質の男を殺す)
「願いを、聞いた。
その男を呼べ。
三日目、日が暮れる前に、帰って来い。
遅れたら、その男を殺す。
ちょっと遅れて来い!
お前の罪は永遠に許してやる」
「なに……
何を言う!」
「はは。
命が大事だったら、遅れて来い。
お前の考えは、わかっている」
このようにして、
セリヌンティウスは
城に呼ばれます。
そして、
メロスは、村に帰ることになります。
王はメロスを信じていない……
セリヌンティウスはメロスを信じている……
約束を守って、帰ってくれば、
メロスは殺される……
しかし、メロスが帰って来なければ
セリヌンティウスが、殺される……
このようにして話は始まります。
(結婚式)
メロスが
街から村に帰ったのは
次の日の朝でした。
そして、
その次の日に、
メロスの妹の結婚式が行われます。
メロスは、
街で起きたことを誰にも
言いません。
みんなは、
陽気に騒ぎます。
メロスも
少しだけ、楽しい気分になります。
結婚式は
次の日の昼に行われた。
二人が神々への言葉を
言い終えた時
黒い雲が、空を覆い始めた。
雨が降り始めた。
やがて、雨は激しくなった。
村の人たちは
何か悪いことが起きるような気がした。
それでも、陽気に歌を歌った。
メロスも、しばらくは
王との約束を忘れていた。
夜になって、
結婚式は賑やかになった。
人々は、外の雨を忘れた。
メロスは、このまま、ここに、いたい、と思った。
しかし、今は、この体は
自分の体ではない。
メロスは、出発する決心をした。
次の日の昼に行われた。
二人が神々への言葉を
言い終えた時
黒い雲が、空を覆い始めた。
雨が降り始めた。
やがて、雨は激しくなった。
村の人たちは
何か悪いことが起きるような気がした。
それでも、陽気に歌を歌った。
メロスも、しばらくは
王との約束を忘れていた。
夜になって、
結婚式は賑やかになった。
人々は、外の雨を忘れた。
メロスは、このまま、ここに、いたい、と思った。
しかし、今は、この体は
自分の体ではない。
メロスは、出発する決心をした。
その次の日、
三日目に、
メロスは、村から出発します。
それは、約束の日です。
その日のうちに、
街に帰らなければなりません。
もし、帰れなければ、
親友が殺されます。
まだ、時間は
十分にある
と、思っていました。
しかし、
メロスの前に、
幾つかの困難が起きます。
その一つが
川です。
前の日の雨で
橋が壊れていたのです。
船もありません。
水は、激しく流れています。
川を渡ることができないのです。
メロスは神に祈ります。
メロスは泣いて、ゼウス(Zeus)に祈った。
「ああ、助けてください!
時が過ぎて行きます。
既に昼です。
日が暮れるまでに、城に着かなければ
親友は
私のために死ぬのです」
しかし、川の水は激しく流れている。
そして、時は消えて行く。
メロスは覚悟した。
泳ぐ以外にない。
(ああ、神よ。見ていてください。
激しい川の流れに負けない
愛と友情の力を)
メロスは、持っている全ての力で
泳ぎ始めた。
神も
その姿を哀れに思ったのか。
メロスは、
反対の岸の木を、
つかむことが出来たのである。
「ああ、助けてください!
時が過ぎて行きます。
既に昼です。
日が暮れるまでに、城に着かなければ
親友は
私のために死ぬのです」
しかし、川の水は激しく流れている。
そして、時は消えて行く。
メロスは覚悟した。
泳ぐ以外にない。
(ああ、神よ。見ていてください。
激しい川の流れに負けない
愛と友情の力を)
メロスは、持っている全ての力で
泳ぎ始めた。
神も
その姿を哀れに思ったのか。
メロスは、
反対の岸の木を、
つかむことが出来たのである。
何とか、川を渡ったメロスは、
今度は、山で、
山賊(bandit)に会います。
山賊は
王の命令で、
メロスを待っていたのです。
そして
メロスを殺そうとします。
しかし、
メロスは、
山賊も倒します。
川を泳いで渡り、
山賊を倒したメロスは
走り続けます。
ところが、
メロスは疲れて
走れなくなります。
ついに
倒れてしまいます。
疲れていたのは、
彼の体だけではありません。
彼の心も
変わり始めます。
メロスは、草の上に寝た。
体が疲れると
精神も疲れる。
(もう、どうなっても、かまわない!)
勇気ある者に、似合わない気持ちになった。
体が疲れると
精神も疲れる。
(もう、どうなっても、かまわない!)
勇気ある者に、似合わない気持ちになった。
***
(王は私に
『少し遅れて来い』
と言った。
遅れたら、人質を殺して
私を助ける、
と約束した。
私は王に怒りを感じた。
けれども、今の私は
王の言うままだ。
私は遅れて行くだろう。
王は私を笑い
そして、私を許すだろう。
それは、つらい。
セリヌンティウス、
私も死ぬ。
君と一緒に死ぬ。
君だけは
私を信じてくれる。
いや、むしろ
悪い人間として生きよう。
村には
私の家がある。
羊もいる。
妹の夫婦も
きっと、一緒に住んでくれるだろう。
正直とか、愛とかは、
要らない。
人を殺して、自分が生きる。
それが人間の生き方だ。
私は嘘をついた!)
メロスは、手足をのばして、眠った。
『少し遅れて来い』
と言った。
遅れたら、人質を殺して
私を助ける、
と約束した。
私は王に怒りを感じた。
けれども、今の私は
王の言うままだ。
私は遅れて行くだろう。
王は私を笑い
そして、私を許すだろう。
それは、つらい。
セリヌンティウス、
私も死ぬ。
君と一緒に死ぬ。
君だけは
私を信じてくれる。
いや、むしろ
悪い人間として生きよう。
村には
私の家がある。
羊もいる。
妹の夫婦も
きっと、一緒に住んでくれるだろう。
正直とか、愛とかは、
要らない。
人を殺して、自分が生きる。
それが人間の生き方だ。
私は嘘をついた!)
メロスは、手足をのばして、眠った。
しかし、
メロスは
再び目を覚まします。
そして
立ち上がり、
走り始めるのです。
メロスは思った。
(日が暮れるまでには
まだ時間がある。
私を、待っている人がいる。
私は、信じられている。
私の命など、問題ではない。
私は、約束を守らなければならない。
今は、それだけだ。
走れ! メロス)
(日が暮れるまでには
まだ時間がある。
私を、待っている人がいる。
私は、信じられている。
私の命など、問題ではない。
私は、約束を守らなければならない。
今は、それだけだ。
走れ! メロス)
(走れ、メロス!)
メロスは走ります。
しかし、日は沈んでいきます。
もう、セリヌンティウスは殺された……
という、人々の会話さえ
聞こえて来ます。
そこへ、
セリヌンティウスと一緒に働いている
フィロストラトスが来ます。
彼は、
メロスが走るのを止めようとします。
間に合わなかったのだ
と言います。
もう、駄目だ
と言います。
しかし、メロスは
止まりません。
メロスは
走ります。
若い男は叫んだ。
その若い男も
メロスの後を走った。
「もう、駄目です。
無駄です。
走るのは止めてください。
もう、助けることは出来ません」
「いや、まだ日は沈んでいない」
「今、殺されるところです。
ああ、あなたは遅かった。
もう少し、早かったなら!」
「いや、まだ日は沈んでいない」
メロスは、
赤く大きな太陽だけを
見ていた。
走る以外にない。
「止めてください。
走るのは、止めてください。
今は、あなたの命が大事です。
あの人は、あなたを信じていました。
王が何を言っても
『メロスは来ます』
と答えました。
あの人は、あなたを強く信じていました」
「だから、走るのだ。
信じられている。
だから、走るのだ。
間に合うか
間に合わないかは
問題ではない。
人の命も
問題ではない。
私は
もっと大きなもののために走っている。
さあ、行こう!
フィロストラトス!」
その若い男も
メロスの後を走った。
「もう、駄目です。
無駄です。
走るのは止めてください。
もう、助けることは出来ません」
「いや、まだ日は沈んでいない」
「今、殺されるところです。
ああ、あなたは遅かった。
もう少し、早かったなら!」
「いや、まだ日は沈んでいない」
メロスは、
赤く大きな太陽だけを
見ていた。
走る以外にない。
「止めてください。
走るのは、止めてください。
今は、あなたの命が大事です。
あの人は、あなたを信じていました。
王が何を言っても
『メロスは来ます』
と答えました。
あの人は、あなたを強く信じていました」
「だから、走るのだ。
信じられている。
だから、走るのだ。
間に合うか
間に合わないかは
問題ではない。
人の命も
問題ではない。
私は
もっと大きなもののために走っている。
さあ、行こう!
フィロストラトス!」
メロスは走りました。
そして
メロスは、ついに、着きます。
メロスは走った。
まだ、日は沈まない。
最後の力を使って
メロスは走った。
メロスは、何も考えていなかった。
ただ、何か大きな力が、
メロスを走らせていた。
日が沈んだ、その時だ。
最後の光が消えた、その時だ。
メロスは、着いた。
間に合った。
「待て。
その人を殺してはならない。
メロスが帰って来た。
約束を守った。
今、帰って来た」
まだ、日は沈まない。
最後の力を使って
メロスは走った。
メロスは、何も考えていなかった。
ただ、何か大きな力が、
メロスを走らせていた。
日が沈んだ、その時だ。
最後の光が消えた、その時だ。
メロスは、着いた。
間に合った。
「待て。
その人を殺してはならない。
メロスが帰って来た。
約束を守った。
今、帰って来た」
抱き合う、
メロスとセリヌンティウスを見た王は
言います。
王ディオニスは
人々の後ろから二人を
見ていた
そして、二人の近くに行き
顔を赤くして
言った。
「お前らは、私の心に勝った。
人を信じるということは
妄想(delusion)ではなかった。
私も、お前らの仲間に入れてくれ」
人々の後ろから二人を
見ていた
そして、二人の近くに行き
顔を赤くして
言った。
「お前らは、私の心に勝った。
人を信じるということは
妄想(delusion)ではなかった。
私も、お前らの仲間に入れてくれ」
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